ライスカレー
高校生の頃、昼休みには部室で、誰かが粗大ゴミから拾ってきたテレビを見ていた。
テレホンショッキングから「金子信雄の楽しい夕食」というのがお決まりのパターンであり、誰もその流れに異議を唱える者はいなかった。
見どころはもちろん、信雄がどんどん酔っ払っていく様である。ため撮りの番組だったので、月曜日放送分の信雄はシラフでも、金曜日放送分ではただの酔っ払いになっていた。
恋よりも酔っ払い観察に夢中だった高校時代を終え、大学も通り過ぎて勤めた会社の社員食堂のカレーは「作りだめ」であった。
月曜日にはジャガイモも人参も入っていた薄めのカレーは、金曜日にはすべてが溶け去って煮詰まり、濃厚でもったりとした、冷やご飯に合うようなカレーになっていた。
同僚たちと、そのカレーを「信雄」と呼んでいた。まるで、信雄が酔っ払っていく様子を見るようだったから。
あれから勤めが変わった。先日ドラマ「ライスカレー」を見たこともあって、今の勤務先の社食でカレーを頼んでみた。
グリンピースが3粒載っていれば「ライスカレー」に出てきてもおかしくないようなカレー。
頼んだのは水曜日。しかし、ものすごく味が薄くてコクのないカレーだった。
そうか、ここの社食は、具のないカレールーだけを毎日もしくは2,3日分作っているのだろうな。具は後乗せ、または後入れ、別添えのカレーなのだな。
別においしかったわけでも何でもないのになんとなく、あの毎日煮詰まっていく信雄カレーを懐かしく思った。
・・・そういえば「ライスカレー」にも信雄が出てたな。
久々に信雄の名前を呼んだわ、画面に向かって。もう、いないんだな、信雄。
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