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90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

容疑者Xの献身

日常生活に於いて、様々な「機械」と共に生活をしている。
去年冷蔵庫を買い換えたのだが、それまではエコ基準も何もないサンヨーの冷蔵庫と15年間を共に過ごしてきた。晩年は大きな唸り声を上げて必死に稼働していたが、どうにもこうにも全盛期ほどの冷やし方はできなくなっていた。新しい冷蔵庫が来る日、電気屋さんに引き取ってもらうために綺麗に拭き上げていたらしみじみと哀しい気持ちになった。
この15年間、親よりも誰よりも私の食生活を把握し、共に暮らしてきた存在だったのに・・・。

また、我が家の炊飯器は、10年ほど前に初号機が壊れた際、「お誕生日プレゼント」として両親が買ってくれたものだ。子供の頃は誕生日プレゼントに自転車やらキャンディ・キャンディの救急セットなどをねだったものだが、年を取ると誕生日に求める物も、生活に役立つ物、家電や米や金券に変遷していく。
正直、自転車を買ってもらった時よりも、炊飯器を買ってもらった時のほうが心の底から嬉しかった。
そんな炊飯器も10年の月日を経て、蓋がちょっと馬鹿になったのか、タイマー炊飯をして朝目覚めると、蓋が開いていることがある。おかげでご飯の表面はカピカピだ。
でも、炊けないわけではない。判断に困るのはこういう時だ。これは買い換える必要があるのか否か。
結局、予算の都合と、炊けないわけではないという理由から買い替えは見送った。そして、炊飯の際には蓋を紐でくくることにした。
ちょっとプレゼントみたいで素敵な炊飯器。まだいける、まだやれる。

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以前に使用していたパソコンも親からもらい受けた低スペックのマウスコンピューターで、CDを取り込みながらyoutubeを見ると必ずフリーズしてシャットダウンした。それでも、しょうがないわ、おじいさんだから、とこちらも気遣いながら何年も一緒に過ごしてきた。
ある日、これはもういよいよいかん、大往生だ!と、新しいパソコンを買った時(それも大して高性能ではない)感極まって友人に「すごいの!!!CD取り込みながらyoutube見ても全然余裕なの!CDも3分くらいで取り込めるの!!!」と訴えた所、「すまないがそれは当たり前の事だ」と冷たく言われた。みんなこんな優秀な子と一緒に暮らしていたのね。
そんな優秀なパソコンも購入から3年が過ぎ、つい1週間ほど前にキーボードのXキーがとれた。留め具が折れたのか、再度はめ込んでもはまらない。
・・・でも、Xくらいならまだいけるわね。最初にXがダメになるあたり、このパソコンも随分空気を読んで、使用頻度の低いキーから外してくれたものだ。やはり家族として気を遣ってくれているのね。
そんな訳で、まだあと何年かはこの、Xのとれたパソコンと一緒に暮らすのだろう。
新品の機械も嬉しいけれど、どこかがダメになりながらもなんとか騙し騙し日々を一緒に過ごす機械は、本当に献身的な、大切な家族だ。
だからきっと、いつかさよならする時がきたらまた感傷的な気持ちになるのだろう。それで新しいパソコンを買ったなら、きちんとはまっているXキーを見ながら「前の子はここが取れちゃってたな、でもそこも可愛らしかった」と思うのだろう。家族だものね。