90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

エキゾチック・ジャパン

梅の花が咲き出す頃、江の島に遊びに行ってきた。久々の江の島。けれど見たかったものはサムエル・コッキング苑でも岩屋の洞窟でもない。島中にいる猫たち、そして土産物屋に並ぶ海亀の剥製だ。
あの海亀の剥製。買っている人を見たことがない。部屋に飾っている人は今までに一人だけ見たことがある。もちろん老人だ。近くに、かつて日本直販が自信満々に売りだしていたぶら下がり健康器が置いてあった。「老人の家」として、あまりに見事な小道具の配置に胸が躍った。
尚、amazonで調べたところ、お値段は縁起をかついで末広がりの88,888円だそうだ。そして、敬老の日などにあげるものかと思いきや、新築祝いに喜ばれるとのことだった。そうだったのか・・・。

激レア!海ガメの剥製:新築祝いに喜ばれております。

激レア!海ガメの剥製:新築祝いに喜ばれております。

下は江の島の土産物屋の海亀3連発。そうそう、これを見に来たんだ。満足。

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一昨日、消化のために有給をとったのだが、前日に上司が、しわくちゃになった東京タワーのチケットをくれた。「なんか、机の整理してたら出てきたからあげる。明日行ってくれば?」
それならありがたく行って参ります。

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しょっちゅう眺めてはいるものの、来るのは人生で3度目。そして東京タワーに来て一番見たかったものは、展望台でもルックダウンウィンドウでもない、やはり土産物屋だ。
外国人をバカにしているのか、というようなセンスのTシャツ。エキゾチック・ジャパンな感じの数々の置物たち。とりわけ「富士山と東京タワーと金閣寺」など、名所全部盛りのキンキラキンの置物。昭和にチラと見かけただけの、あれらはまだあるのかしら。展望台に行くより何より先に、まずは土産物屋を確認せねば、と、修学旅行生でごった返すショッピングフロアに入った。

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・・・あった!!!東京タワー、城?、国会議事堂!そして後ろに流鏑馬な扇子。「日本の美」の文字。完璧すぎる!

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ミニチュア東京タワーも浮世絵プレートも、ゴム印で押された値札も、何もかもが素晴らしい、完璧だ。
ああ、東京タワーに来たな、と実感できるのは、これらの、昭和から時を止めたままの土産物屋に来た時だ。浅草に来たなと実感できるのは、仲見世に並ぶペラペラでド派手な着物に外人が浮かれている時だ。海辺に来たことを実感できるのは、土産物屋の壁に下がる海亀の剥製と、軒先の貝殻詰め合わせを見た時だ。日光に来たなと実感できるのは、ヘタウマな絵で華厳の滝東照宮が描かれた安っぽい湯のみ茶碗を見た時だ。

どれもこれも、「誰が買うんだ、これ」と思う。もちろん私は買わない。
でも、ないと困るのだ。その場にあって欲しいのだ。「誰が買うんだよ」とゲラゲラ笑ったことも含めて、楽しかった思い出、懐かしい思い出になるんだもの。思い出を確認するために、こうやって戻って来たりするんだもの、いつかまた。