90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

ミッション・インポッシブル

ここ最近、モノスヤさん(id:monosuya86)がフォネティックコードの事をブログに書いていたので思い出した。
フォネティックコードという呼び名だというのは、モノスヤさんの記事で初めて知ったのだけれど、アルファベットを無線や電話で正しく伝えるためのアレ。ちょっとスパイっぽい感じのするやつ。

学生時代、友達の紹介でアマチュア無線連盟なる所でアルバイトをした事があって、そこで初めてあの独特なアルファベットの言い回しに出会った。
「Aはアルファ、Bはブラボー、Cはチャーリー・・・」

ブラボー???チャーリーって誰!?何なの、コレwwwwwwww、と小娘は失笑し「こんなの口にできませんよ、ミッション・インポッシブルですよ、別に私、無線やるわけじゃないし」と最後の最後まで、あれに慣れることのないままアルバイトを辞めた。

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く!アレを覚えておくべきだったか!
・・・と思ったのは劇団に入って、お客様のお座席予約電話を受けだした頃だ。劇場の座席には大抵アルファベットで「S列15番」などと番号が振られている。特に言い方の決まりはなくて、「お客様が間違えないようにわかりやすくご案内して下さい」とだけ言われた。
それで自分で適当に工夫して「トウキョウのT列」「フランスのF列」などと言っていたが、ある日、福岡のおばちゃんに厳しく言われた。
は?フランス?ああ、福岡のFな?」・・・左様で・・・ございますね・・・。
「ジャイアンツのG」と言ったところ、大阪のおじさんは「ジャイアンツ言わんといて、胸糞悪いわ」とマンガのように言った。同僚は可愛らしく高い声で「ピーナッツのP」と言っていた。あれがいつもおかしかった。
また、旅行代理店には代理店独特のコードがあるらしく、代理店出身の上司が「ペキンのB」と言うのがいつもひっかかった。確かに「Beijing」だけどさ!ペキンって聞いたら「P」だと思うじゃん!なにそれ、ひどい!
劇場によっては列がいろは順にふられているものもあった。ゲイの先輩は口を大きく動かして言った。「ぬー!、でございます、お客様。ぬかづけのぬー!」あれは反則でしょ、ズルいでしょ、吹くに決まってるでしょ。

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まあ、もしもフォネティックコードを覚えていたとしても、きっとお客様には「は?チャーリーって何!!」とか「ケベックってなんじゃ!」とか、「もっともでございます」な怒られ方をしたのだろうけれど。

ちなみに、恐らく私の生涯の中で最も規模が大きいと思われる仕事は、あのアマチュア無線連盟でのアルバイト時代、無線機器を乗せたロケットだか人工衛星だかが打ち上げられることになり、その無線機器の応答メッセージとして私の声が載せられたことだ。「こちらは○○、This is○○」みたいなやつ。
おやつの時間に「ちょっと来て、ちょっとこれ読んで。」と呼ばれて吹き込んだだけなのに翌月の会報誌に「宇宙から女性の声が聞こえて感動!」などと言う読者の声が掲載されており、「すまぬ、それは地上にいる私の声です」と何か申し訳ない気持ちになった。
あの時、フォネティックコードを口にしたのかどうかは定かではない。もしも口にしたのであれば、きっとそれが私が口にした最初で最後のフォネティックコード