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90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

字あまり

はてなのプロフィール欄にはこう書いた。「日々些細なことに気をとられがち」
だから、ついついこんな看板の前でも、はて、と立ち止まってしまう。

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「申し込みは前日より早く」
これは何故、「前日まで」ではいけなかったのだろう・・・。
まあ、いいんだけど、別に。一枚まるまる自分の所の看板なんだし、新聞みたいに字数制限がシビアな訳じゃないんだろうからいいんだけど。
電報やら新聞やらは字数でお金が決まったり、紙面に限りがあるので、文章の簡素化に非常に厳しい。
あの日本海海戦時の秋山真之の「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」についてWikipediaにはこう書いてある。

「本日天気晴朗ナレドモ浪高シ」は、「本日天気晴朗ノ為、我ガ連合艦隊ハ敵艦隊撃滅ニ向ケ出撃可能。ナレドモ浪高ク旧式小型艦艇及ビ水雷艇ハ出撃不可ノ為、主力艦ノミデ出撃ス」という意味を、漢字を含めて13文字、ひらがなのみでも僅か20文字という驚異的な短さで説明しているため、今でも短い文章で多くのことを的確に伝えた名文として高く評価されている。

パっと短い文章を思いつくのもすごいが、理解する方もすごい。本当にすごい。

戦後、祖母は求人広告の前で常に溜息をついていたと言う。「だってね、どの募集広告を見ても「細面」て書いてあるのよ。おばあちゃん細面じゃないからね、鏡を見ては溜息ついてたの」
・・・後になって、祖母はようやく気がついたそうだ。「細面」とは「ほそおもて」という意味ではなく、「委細面談」の略だということに。いくら字数に制限があるからと言っても、ものすごい略し方するもんだな。これが理解できないバカは採らないよ、とでも言うつもりなのか。

学生時代のある日、私は東京裁判に関するレポートに追われ、来る日も来る日もマッカーサーの事ばかり考えて過ごしていた。息抜きにふらりと行った、深夜のモスバーガー、斜向かいに座ったおじさんの読むスポーツ新聞の求人欄には「マ師」という文字がずらりと並んでいた。「急募マ師」「マ師募集」「マ師高待遇」
マ師!マ師ってなんだ、マッカーサー元帥か!そんなの急募に決まってるだろう、高待遇に決まってるだろう、あの人相当頭いいぞ!できることなら、私だってマッカーサー元帥になりたかった・・・。
ココアを飲みながら、マ師って何か散々考えたが、マッカーサーに脳内を侵食された私にはまるで見当もつかなかった。帰宅後母に「ねえ、マ師急募ってなんだと思う?」と聞いた所、母は冷たく言った。
「マッサージ師でしょ。マッカーサーなワケないじゃん。バカじゃない?」
ああ、バカですよ!どうせバカですよ、あなたのバカな娘はまぎれもなくあなたのばあちゃんの孫ですよ・・・!


きっとあの神社の看板も簡素化した名文で書いたって「なんだコレ?」と意味を理解できない者が出るかもしれないから、文字数を惜しまず「前日より早く」って書いてあるんだろうな、さすが神社、親切なことね。
・・・でも「前日迄」でも別に間違えないと思うのよ?そこは。