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90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

記録と記憶

泡沫

祖母は10年日記をつけていた。「メモ程度なんだけどね、あとで読み返すと、あの時はこんな事があったな、って色々思い出せていいの」と楽しそうに言う。
10年日記ももう2冊程いっぱいになったらしく、今は5年日記だ。
「日記がなくなるたびにあなたたちのお母さんが買ってくれるんだけどね、もうおばあちゃんさすがに10年日記は無理だと思って、お母さんに頼んで5年にしてもらったら、こないだ5年日記も書き終わっちゃったの」
嬉しそうにわらう祖母に「もう!おばあちゃんはもう1回10年日記買ったって大丈夫だってば!」と無邪気な孫らしく笑ってみたけど。

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これは、5,6年前に湯河原駅前の食堂で家族でご飯を食べた時に見つけた、懐かしい星占い付き灰皿。自分の星座に合わせて100円を入れると、巻物みたいな占いがでてくる。巻物の最後の方には「詳しいご相談はこちらまで」と占い師のおじいさんの住所が掲載されていた。もう21世紀なのに未だ3桁の郵便番号で、住所は島根県だった。「このおじいさん、まだこの世にいるかしら」と心配になった事は覚えているが、占いの結果は覚えていない。

私も女子の端くれ、占いは割と好きだ。折に触れて友人たちと手相を見てもらいに出かけたり、石井ゆかりさんの星占いだって毎日毎週毎年楽しみにしている。
そんな石井ゆかりさんの占いサイト「筋トレ」の全体の空模様の今週分にはこんな風に書かれていた。
「木星が蟹座に入るから、蟹座さんにとっては“12年に一度の幸運期”って言われることも多いけど、どっちかって言うと嵐のような一年になるかも。不安な人は12年前を思い出してみると感覚がつかめる」

それで蟹座の私は12年前を必死に思い出そうとするのだけど「12年前、2001年、働いていた」ということしか思い出せない。
あまり思い出を大事にとっておく方ではないので、当時の手帳も携帯電話も写真も処分してしまっていて、記憶にも記録にも残っていない。
嗚呼。よく学生の頃は思い出だなんだと言って、何かにつけて卒業アルバムだの修学旅行写真集だの作られていたけど、正直、学生時代のことって記憶に残りやすいから、あんなもの必要なかったんじゃないかしら。
むしろ、働き出してからの方が、もう全く記憶に残らないような気がする。ましてや結婚、出産のような節目もなく、同じ会社で同じ人達に囲まれて10年も過ごしてしまったら、2001年も2006年も2008年も、何の違いがあるのかわからない。

あーあ、私も祖母みたいにメモ程度でも10年日記をつけておくべきだったかしら。年をとって、記憶があやふやになってきてからの方が、記録って大切になるものなのね。
まあとりあえず、12年前、恋に破れて慟哭した記憶もなければ、死にかけた記憶も、アラブの石油王にプロポーズされた記憶もないので、「嵐のような一年」とは言え、たかが知れてるんでしょうけどね。