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90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

おじいさん先生

泡沫

ヤギから漂う、おじいさん感と先生感は異常。

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風邪をひいて、喉の痛みはとれたが咳がひどい。
もうすぐジブリ「風立ちぬ」が公開されることもあり、コホコホしながら「ああ、高原のサナトリウム行きかしら」とうっとり酔いしれるほどに精神は元気ハツラツであるが。
会社でもコホコホしながら「ああ、千年も万年も生きたいわねえ」と脳内で密かに不如帰ごっこを繰り広げていたところ、主任に「女医のところに行け」と言われる。すると隣の席の同僚も「ああ、あの女医!あれはね、一度見てみるべき」と言いだす。
なんでも、隣のビルのメディカルモールの内科の女医さんが、おかしな人らしい。


医者と言えば、うちの母が連れてってくれる医者はどれもこれもおじいさん先生だった。理由は「地元で長くやってるんだからいい先生に決まっている」という、有無を言わせぬ「お母さん理論」。
だから、昔、何かの細菌で私の足が腫れ上がった時も、すぐさまおじいさん先生の整形外科に運び込まれた。先生は腫れ上がった私の足をピシャリと叩いて言った。
「君は、もっと真剣に足と向き合いなさい。」
今、思い返してみてもまるで意味がわからない。しかし何か深いような気がする。

外耳の皮膚がガサガサに荒れてただれた時も、半分つぶれかけのような皮膚科に連れて行かれた。受付は先生の奥様かと思われるお婆さんで、震える指で診察券を書いてくれた。おじいさん先生はもう、耳も相当悪いのか、かなりの大声で言った。
「掻いてはいけない。だが人間は痒みには勝てない生き物だからね!
・・・ど、どうしろと・・・。困惑する私に先生は、小さなピンク色の薬のチューブを差し出した。
「これを塗りなさい。治らないけどね。
憮然として、車で待つ母の元へ戻り、先生の言葉を伝えると、母は腹を抱えて笑い「さすが、先生は真実しか口にしない!」といたく感心していた。
感心している場合か!治る薬を出せ!
あのご夫婦も、もう引退したのか、皮膚科はなくなってしまった。


そんな訳で、私はね、ちょっとやそっとのおかしな医者じゃ驚かないわよ!どんな女医だかみてやろうじゃないか!と、昨日の会社帰り、女医の元に行ってきた。
覇気のないアウン・サン・スー・チーさんみたいな女医さんは、・・・この人、対人恐怖症じゃないかしら・・・と思わせるタイプの人で、声が小さく、ぼそぼそと早口でしゃべり、人と目を合わせようとしない。おどおどとパソコンを叩きながら「それじゃあ、あの」「それじゃあ、あの」と繰り返すので、ハイハイと聞いていたら、困ったように同じ薬の説明を繰り返す。どうやら「それじゃあ、あの」は診察終了の合図だったようだ。私が席を立ち「ありがとうございました」というと、ホッとしたような顔をする。
この「ちゃんと診察をしてるんだかしてないんだかよくわからない」所が、主任と同僚の言う女医さんのおかしな所であるらしい。

薬も出してもらったので、いいんだけど、いいんだけど・・・。
なんだかやっぱり、おじいさん先生にピシャっとはっきりキッパリ、訳の分からない持論を言われる方がスッキリするな、と思ってしまった。
「ほら、ごらん!絶対お医者さんはおじいさんに限るわよ!」と母が得意げな顔をするのかと思うと、ちょっと悔しいんだけど。