90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

いい日旅立ち

高校時代の友人たちと、二十歳くらいの頃から毎年のように旅をしていた。
当初、それは「宛のない旅」で取り敢えず集まってから、「どこ行く?」「西?」「国道1号を終わりまで行ってみようぜ」と無謀に車を走らせていた。お金がないから全部下道で、宿もとらず途中のスーパー銭湯で仮眠して、また夜通し車を走らせる。ともかく遠くへ行きたかった。
それからみんな働き始めて、高速道路を使うようにはなったけれど、相変わらず行き先は決めず。宿は当日飛び込みで取った。四国で思いつきで少しだけお遍路してみたり、夜中になぜか新潟港を見に行ったり、夜明けに山形遊佐町で、山の向こうが明るくなっていく日本海側の夜明けを見て感動したり、静岡で砂丘を発見して大はしゃぎしたり、太陽の塔を横目にどこに向かうか口論になったり、どこまでもまっすぐな八郎潟を走ったり。
テーマソングは奥田民生「イージュー☆ライダー」

30近くなって「旅行に行くが行き先は決まっていない」と言うと周りの人たちに呆れたように言われた。「若いねえ」
そう言われて初めてハタ、と気がついた。ああ、そうか、これって年取るとなかなかできないことなのか。こういう事が一緒にできる友達ってなかなかいなくなるものなのか。確かに一緒に行く友人たちもどんどん減っていき、5.6年前からはついに、私と男友達のTだけになった。
周りの人たちは今度は驚いて言った。
「え!!男の人と二人だけで旅行なんて、間違いが起きたらどうするんですか!」
・・・。間違いません!・・・間違わないのよ、これがまた・・・。そういう雰囲気になったことすら皆無な我々。
運転できるのはTだけなので、必然的に旅行は割と計画的なものになった。

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この3連休はTと一緒に奈良に旅行に行ってくる。遠いので新幹線。宿も事前にとってある。まるで普通の大人の旅行みたいになっちゃったけど、でも、奈良でどこに行くかは決めていない。
決めずに、映画「萌の朱雀」の原作を読んだり、万葉集を読んでみたりしてイメージだけはふくらませてある。何を見ても、山が緑なのを見ても、暑ささえも楽しめるように。旅の方法は違っても。

過ぎ去った、僕らの青春をおおげさに言うのならば、きっとそういうことなんだろう。