夏の夜の夢
※写真はいつか行った諏訪大社。
我が家と実家は徒歩にして20分ほどの距離にある。近いから毎日のように行き来する家族もあるらしいが、うちの場合は全員、近さ故にほとんど会わないし連絡もしない。ただ、昨日は奈良のお土産に買ってきた大きなどら焼きを渡すために実家に行ってきた。カルピスを飲んで、少し話し込んで21時頃実家を後にする。雨のそぼ降る涼しい夜であった。
ふと、新しくできたマンション前を行きつ戻りつしているおじいさんが目についた。あらあら、道に迷ったのかしら、大丈夫かしら、こんな時間に。
一旦通り過ぎたあと、気になって振り向いたら、おじいさんが待ち構えていたかのように駆け寄って話しかけてきた。
「あのー、ここは、この地図でいうとどこになりますか?地図が古くてわからなくて」
確かに古い。何せ青焼きコピーだ。青焼き見たのなんて何年ぶりかしら。随分前に建ったシャトレーゼも病院も載っていない。これホントいつの地図よ。
うーん、多分、今ここですね、と案内したところ、おじいさんは言う。「じゃあ、お寺はこっちですか?お寺に行きたいんです。この近くにあるはずなんです」
寺!!!寺か。寺、ね。・・・いや、あるよ?あるにはありますよ?確かナントカって寺がね、この先のその真っ暗になってる山の中腹にね。・・・アナタ今からそんなトコ行っちゃう?
「あのー、お寺、ありますけどー、山の中ですよ?」と恐る恐る告げると、おじいさんは顔をパッと輝かせて「そう!確か山の中でした!そのお寺です」と言う。・・・あー、そう。行きたいんだ・・・。そう・・・。
そこの信号を曲がってしばらく行って左です、と告げるとおじいさんは何度もお礼を言って去って行った。
それで私も、「こんな時間に山の中の寺ねえ・・・何か坊さんの飲み会でもあるのかしら」と首を捻りながら歩き出したけど・・・ふと、恐ろしいことを考えてしまった。
「あのおじいさん、生きてたよね?」
ままままま、まさかゆゆゆゆゆゆ幽霊とかじゃないですよね、ほら、持ってる地図もやたらと古かったし・・・。で、で、でも、ああああんなにしっかり喋ってたし、生きてたよね、生きてたよね?
・・・まあ、怖い人じゃなかったから幽霊だったとしてもいいんだけど、さ。
- 作者: ラフカディオ・ハーン,ヤン・シュヴァンクマイエル,平井呈一
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