90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

とっぱずれ

青春18切符の旅、第2弾で銚子に行ってきた。行きは成田線経由、帰りは総武線。
犬吠埼灯台の資料館で知ったのだが、江戸時代の豪商の古帳庵という人が「ほととぎす銚子は国のとっぱずれ」という句を詠んでいるそうだ。とっぱずれという単語には東の端という漢字でもあてるんだろうか。
人は誰でも突端に憧れる気持ちがあるのだと思う。そこに何があるというわけでもないけれど、ともかく行くことのできる限界まで行って、本当にそこが地の終わりなのか、どんな景色が見えるのか、知りたくなる。

銚子からは銚子電鉄の一日乗車券で外川や犬吠に向かう。もれなくぬれ煎餅が1枚ついてくる、お得なチケットだ。冷房もなくて、古い扇風機が天井でゴトゴト回っていて、窓が開け放たれていて、醤油工場の近くを通ると醤油の匂いが鼻につくし、線路脇に生い茂った草が今にも窓から入ってきそう。いいな、こういうの。旅行に来た気持ちになる。

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漁師町を歩きながら驚くことは、漁業用の網が至る所で活用されていること。
車庫の入り口フェンスの代わりにも、ゴミ集積場のカラスよけネットにも、はたまた玉ねぎやニンニクの乾燥保存にも、いずれも漁業用の網が使われていた。

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犬吠埼灯台の上から見た海。そうだ、この先に何もないから突端なんだ。

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灯台の資料館には、灯台で使われているレンズが低い音を立てながらぐるぐると回っていた。裸電球一つの灯りがこんなにも明るく反射するんだな。光を、何かを「遠くに届けよう」とする人の想いというのは胸を打つものだな。右の写真は戦争中に、カモフラージュされた灯台。それでも灯台を狙って爆撃されたんだそうだ。そりゃそうだ、戦闘に支障が出るような所を狙うのは当然だ。第一カモフラージュしきれてない。でも、その必死さにやっぱり心打たれる。

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銚子駅に戻って、観光案内所で電動アシスト自転車「ぬれ煎餅イシガミ号」を2時間500円で借りてぶらぶら。電動アシスト自転車ってこんなに楽なものなのね。すごくアシストしてくれる。これなら、年取ってばあちゃんになっても自転車乗れるな。駅から真っ直ぐ、海に向かって走ったつもりが、海ではなくて利根川だった。雄大。

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自転車で、こんな畑の真ん中の砂利道を走る僕の夏休み。風力発電の根本まで行ってみたかったのだ。結局の所、根本からの眺めよりも少し離れた所から見た姿のほうが美しかったけれど。

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そして、ついでになんとなく足が向いてしまったのが、甲子園の古豪、銚子商業高校。ああ、ああ、キモい大人だって言う人は言えばいいですよ。
倉本聰のドラマ「ライスカレー」で、この学校をモデルにした「銚子工業高校」野球部出身の3人を時任三郎と布施博と陣内孝則が演じていて、確かこのグランドも出てきたと思う。あれもいいドラマだった。
お盆も近い、この暑い中、野球部は練習はお休みかと思っていたけれど、ちゃんとユニフォームを着てグランドに出ていた。秋季大会、頑張れ!

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坂の上の銚子商業高校から、自転車で生ぬるい風を切って駆け降りてきた。
知らない街なのに、こうして夏の午後に、遠くに海が見える静かな道を自転車で駆け下りていると、なんだかこの突端の街で生まれ育ったような気持ちになった。
そしてこの街の子みたいに日焼けして帰ってきた。