90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

驕れる者は久しからず

ことわざか何か知らないが、祖母はしょっちゅう「お米とお茶は一度いい物を食べたらもう元には戻れないからね」と言っていた。だから、あんまり贅沢に慣れてはいけないと。
ちょっとご馳走を作ったり、頂き物のお菓子なんぞを出そうものなら、祖母は嬉しそうにしながらも、「ああ、こんな贅沢したら罰があたるね」「おばあちゃん口が曲がるよ」なんて震え上がっていた。その度に「いいじゃない、たまには」と答えていたけれど、ついつい私も同じように貧乏性になってしまった。

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これは、奈良の食堂の店先にあった、そうめんのサンプル。この前「そうめん狂騒曲」という記事でも書いたが、こんなものを写真に撮るくらい衝撃的だったのだ。関西ではお店のメニューにそうめんがあるということが。
あの記事を書いた時、コメント欄で関西の方に、奈良は三輪素麺の産地だから、そうめんがお店に出ているのだと教えてもらって、なるほど!と思った。恥ずかしながらそうめんの産地など全く知らなかったし、気にしたこともなく、私は大抵いつも、ヨーカドーや生協などの安いプライベートブランドのそうめんばかり食べていた。
しかし、そうか、三輪素麺ね。ふーん。・・・そろそろ、私もちょっといいそうめん食べてもいいんじゃないかしら。

夏の暑さが頭に回ったか、ふとスーパーでそんなことを思い、「ちょっといいそうめん」を見てみた。揖保乃糸300グラム398円。三輪素麺300グラム298円。ひいーーーーー(((( ;゚Д゚)))!だって、あなた、そうめんて1人前100グラムとかでしょ。3人前で400円?米より高いじゃないですか!何?そうめんて高級食材だったの?私が普段買ってる生協のそうめんなんて1キロ298円よ?いつもの3~4倍!

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そうめん売り場で「そうめん、恐ろしい子!」と白目を剥いて立ち尽くす私の頭にこれだけのことが瞬時に浮かんでは去っていった。

いいでしょう、その戦い、受けて立つわ。絶対にあなたには負けないわ、と姫川亜弓の如く決意して、それでも貧乏性なので揖保乃糸には手が出せず、三輪素麺をお買い上げして食べてみた。
・・・なんという!細く、しなやかで、コシが強く、切れる時にはプチプチと音がしそうな歯ごたえ!これがそうめん!これが本物のそうめんなのね!今まで食べていたものは、そうめん型ひやむぎだったのね!

ひとしきり感動したあとで、今度は恐ろしくなった。
あああ、こんな贅沢に慣れたらダメだ。人間がダメになる。口が奢る。罰があたる。ダメダメダメ。そうめんで贅沢するくらいなら、他のことで贅沢したいもの、もっとあちこち遊びに行きたいもの、ダメよ、こんなそうめんを普通のことだと思ったら・・・。
かくして、祖母の教えがしっかり染み付いた私は、今日また、生協に1キロ298円のそうめん・・・いや、そうめん型ひやむぎを注文したのでした。いいんだ、人には分ってものがあるんだから・・・。驕れる者は久しからずって平家物語だって言ってたんだから・・・。