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90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

きのこ狩り

かねてより、紅葉狩り、ぶどう狩り、きのこ狩りだのという言葉を不可思議に思い、なぜ芋やレンコンは「芋掘り」「レンコン堀り」であって「狩り」にはならないのか、その差別性はどこから来るのかと考えていたが、こちらを読む限り、貴族様の楽しみから来ているらしい。

「狩り」じゃないのに紅葉狩り?まさかの鬼女を狩ることに由来! - NAVER まとめ

ぶどうやきのこだったなら「やあ、楽しいですなあ」「我らの狩りは雅でおじゃるな」と麻呂眉のお貴族様も楽しめるのだろう。芋やレンコンはきっと雅を感じてもらえないから「狩り」には昇格しないのだろう。お着物の裾も汚れますものね。

若干イラっとしないでもないが、わたくしもまた、現実のきのこにはさしたる興味もないくせに、文章の中できのこ狩りをしてはTwitterでbotに呟かせて悦に入っている者なのでそうそう偉そうな事も言えない。

すっかり秋めいてきて、世はきのこの季節だ。であるからには放ったらかし気味のこのbotにも新たなきのこを投入せねばなるまい、と図書館できのこの本を借りてきた。その名も「いきなりきのこ採り名人」

いきなりきのこ採り名人 (小学館SJ・MOOK)

いきなりきのこ採り名人 (小学館SJ・MOOK)

すごいな。いきなり、だもんな。いきなりきのこ採り名人。え?これを読めば、実際のきのこにさして興味のない私でさえ、いきなりきのこ採り名人に?と思わせる力強さがあるもんな。さすが、きのこに関する文章はひと味もふた味も違うぜ。・・・と、タイトルだけでも感嘆の溜息をついたが、目次がまたすごい。

・不思議でおもしろいきのこの世界へようこそ
・とりあえずマスターしたいきのこの基本38種
・必ずマスターしたい毒きのこ12種
・きのこ採りの極意
・きのこ見分けの極意
・きのこを楽しむ
・最近名前がついた21世紀キノコ16種

何の資格試験の参考書だ!と思うような見出しだが、参考書と違う所はこの「必ずマスターしたい毒キノコ12種」を覚えられない者には中毒や死が待ち受けているという点だ。だが安心されよ、この本には写真付きで詳しい説明とともに、覚えやすいように「警戒心を起こさせない見かけがくせもの カキシメジ」などというキャッチフレーズが一つ一つのキノコに対してつけられている。これで安心。覚えないけど。

また「きのこ採りの極意」の項にはこの本の著者井口潔氏からのアツいメッセージが掲載されている。タイトルがまたものすごい。

「国内トップクラスの識別眼を持つ著者の「きのこどっぷり人生」きのこ歴は、小1時代の秋のお墓参りから始まった」

まるで「宇宙人は本当に存在した!」とでも言わんばかりの勢いを持つシュールな文章に、わたくしはしばし呆気にとられた後、「何を言うとんのじゃ、コイツは!」と大声で呟いてしまうのであります。
「きのこ採りの極意」はその後「きのこの立場になって居心地の良い森を探せ」「紳士的に探索すべし」「きのこの本質の多くは表よりも裏に現れる」と、忍者修行のような厳しさで続いていく。

きのこマニアたちがこのように、無邪気でまっすぐで尽きることのない情熱を注いできのこ狩りを楽しむように、この私は、それらの情熱をもって書かれた文章を「なんとシュール!」「真面目な顔して何言ってんだコイツ」と毎回毎回飽きることなく、驚きながら採集している。
これが私のきのこ狩り。