90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

声に出してみたい日本語

初めてできた親友はひろみちゃん。頭のいい女の子だった。小学1年生の私たちは団地の公園のジャングルジムをお城に見たてて囚われのお姫様ごっこなんかをしたものだったけれど、ある日ひろみちゃんはジャングルジムの上で物憂げにため息をついて言った。
「愛と恋ってどう違うのかなあ」
え!!ちょっと待って!もうそんな事考えてるの?先を越されたなあ、大人だなあと呆然としたが、その後大きくなっても、そんな事を真剣に考えたことも口にできた事もない。もりそばとかけそばの違いについては考えたが。
「愛と恋の違い」とか「男女の友情」なんて話題が口に上るのもせいぜい大学生くらいまでだから、もうきっとあの言葉を切なげに口にするチャンスは一生ないんだろう。一度くらいは言ってみたかった…。

高校生になって最初に出た数学の宿題は、数学の教科書に載っている前書きを読んでこい、というものだった。これから3年間、高校数学を学ぶに当たっての目的や希望が書いてあるらしい前書き。さすが、高校の宿題は一味違うな、と思った。
その15行目あたりに「鑑みて」という言葉が書いてあった。読めるけれど意味はよくわからない。こんな言葉を使うなんてさすが高校生だな、とまたしても感心しながら調べたけれど、どうにも意味がわからなかった。
入学の頃、あまりに「うーん、鑑みて!うーむ!」と唸っていたせいか、卒業する頃、母に言われた。
「で、あなた、3年間かけて「鑑みて」は理解できたの?」
…できてないです。「鑑みて」と「畢竟」が出てくると苦手意識なのかそれだけで文章の意味が掴めなくなる。いつか、するっと使ってみたい。「鑑みて」

f:id:mame90:20131008083826j:plain

今月末は奈良に行く。法隆寺の夢殿開扉と、興福寺の北円堂開扉、そして正倉院展、という豪華スケジュールに、これは行くしかあるまい!と決意した。
旅費は少しでも安くあげたいから、夜行バスでいい、でも帰りは新幹線だな、宿も一泊くらいボロい所でも共同のゲストハウスでもいいや、とあれこれ考えて予算を立てたが、ふと見たJTBの格安フリーツアーとほぼ料金が変わらなかった。JTBだったら行き帰りとも新幹線、宿もチェーンのビジネスホテルだ。なーんだ、無理して夜行バスに乗って寝不足の体で歩き回る必要ないのか、やっぱり団体枠持ってるせいか、旅行代理店の方が安上がりだったりするんだな。送られた行程表を見ながら「餅は餅屋って言うもんな」とにまにまする。

そして、「餅は餅屋って言葉を自然に使えた!ついに使えた!大人になった!」ということにもにまにまして、「餅は餅屋」「餅は餅屋」と繰り返した。

いつかリアルで言ってみたい言葉100選 - 勝つる2chまとめブログ