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90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

いつか王子様が

泡沫

子供の頃、憧れたお話は「眠り姫」
ものぐさなせいかも知れない。自分がぐーすか寝こけている間に王子様が来てアイラビューとか言ってくれるなんて、まあステキ!と思った。それで10歳頃までは、眠る前にはいつも「王子様が来たらどうしよう、キャー!」と浮かれた想像をして興奮した。

その望みが絶たれたのは父親がアウトドアにはまり、家の中のものを次々とアウトドア仕様にしていった頃だ。凝りだすと一途な人なのか、食器もどんどんシェラカップだとか山用の皿になっていき、果ては寝袋を買い求め「今日からこれで寝ろ」と言われた。逆らおうものなら暴力に打って出られるので、渋々従ったが、毎晩「あーあ、こんなんじゃ王子様なんて絶対来ない。馬で来たって素通りだよ、絶対私をお姫様になんかしてくれないよ」と悲嘆に暮れた。

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そんな訳で、寝袋にまるでいい印象がなかった。
こんなので寝るのなんて軍隊の人みたい、戦争みたい、まるでロマンティックじゃない、としょんぼりしていた。
高校生になった頃、部室に泊まりこむ男子たちが寝袋を持ってきて、「俺は家でも寝袋だ」とか「すげー便利だよな」とか盛り上がるのを見て「ええ?そんなにポピュラーなもの?」と驚いた。

でも、今になって実は、少し寝袋が欲しくなっている。だって「星を見に行くんなら寝袋があると便利だよ。寒くないし、寝っ転がって星を見上げられるし」なんて言われるのだ。寒くない!寝っ転がって!・・・最高ではないですか。
しかも、いつかカミーノ・デ・サンティアゴに行くことに憧れているが、あの旅では巡礼者用宿泊施設の簡易ベッドで眠る際に寝袋は必需品らしい。山歩きしていても、寝袋やマットをザックにくくりつけて歩いている人が皆、ベテランのようでカッコよく見える。

それで、あちこちで寝袋を見ては、いいなー、なんて思っている。まさかこんな日が来ようとは!
寝袋の形が「マミー型」(ミイラ型)なんて呼ばれることにも驚いている。なんと直接的な!
そして、昨日、上の弟の披露宴のテーブルで、下の弟が「いやあ、こないだ寝袋買っちゃってさあ、嬉しくてベランダで寝たよ」なんてはしゃいでいたのにも「なんとタイムリー!そして何たるアホの子!」と驚いた。
けれど、一番驚いているのは「もしも買ったら私もベランダで寝てみるかもな」と思ってしまった自分に対してだ。

「いつか王子様が」と夢見ていた幼少時代、「こんな寝袋で寝ていたら王子様なんて来やしない」と散々悲嘆に暮れたものだが、こんなにも長いこと来ない所を見ると、いい加減、私の王子様はきっとどこかで遭難してしまわれたのであろう。寝袋も持たずに馬で駆け巡っていたのではないかしら、あの方。
やっぱり大切よね、寝袋。