90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

この広い土鍋いっぱい

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何も一人暮らしでこんなに鍋一杯のおでんを作らなくても…と毎回少しの不安と、そして喜びを胸におでんを作る。

この前、篭ノ登山に行った帰り、妙義山の近くで玉こんにゃくを買ってきた。群馬と言えばこんにゃくだものね。それで帰宅するなり、すぐにおでんを仕込んだ。
仕込んだその日はまだ食べないのでガス台に土鍋ごと置きっ放しにしておく。

去年の冬もそうしておでんを仕込んで会社に出かけた。鍋いっぱいのおでん!今夜はおでん!と胸ときめかせて。
そうしたらなんと、震度3か4くらいの地震が起きるじゃないですか!
会社で私は真っ青になった。ああ、私の、あの鍋いっぱいのおでんは、今頃床に落ちて粉々になっているのではないかしら。帰宅して、私がまずやるべきことは、泣きながら割れた土鍋とおでんを片付け、飛び散った汁を拭きあげることになるのではないかしら…。
どうか、神様、私のおでんをお守り下さい。
…私の願いは大抵の場合、これくらい些細なものだ。

願いが聞き届けられたのか、おでんは無事であった。会社で「ああ、おでんが…」と頭を抱えていた私を心配してくれていた同僚たちに「おでん無事!」と報告してから意気揚々と火を入れて食べた。美味しかった!

そんな事があったので、今回も仕込んだ後、会社に行こうとして一瞬不安になり、「どうか私のおでんをお守り下さい」と神様に祈った。
尚、特に信仰をもたない私の神様は、よくありがちな、先のぐるぐるした杖を持って白いひげを生やしたおじいさんのイメージ。そして耳は遠め。

おかげさまで地震もなく、うきうき浮かれておでんを食べる。後でおでんカレーにしようかなあ、おでんご飯もいいよね、とリメイク方法も考えていたのに、結局、三日半で食べ切ってしまった。
次こそ、おでんカレーにしよう!と、いつおでんを作ろうかと計画中だけれど、作ったらきっとまた、地震が来ないか不安になって神様に祈るんだろう。
「どうか私の、土鍋いっぱいのおでんをお守り下さい」って。