90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

つまらない人

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これは埼玉県深谷市の公式キャラクターふっかちゃん。
頭に深谷ねぎを生やした、おもしろい子。


この年になると、女たちは大体「もう一人で生きてくわ」と腹をくくっているが、男たちは「そろそろ所帯を持たねばヤバい」と焦りだすようだ。

友人ヤマダが婚活をしている。
なんでも婚活サイトに登録をし、メールやり取りをして、気が合えば「会いましょうか」とデートするのだそうだ。
10月にみんなで会った時に、「中旬に婚活サイトで知り合った人と会う。相手は歴史好きの人だ」と言っていたので、私とアケミは一生懸命考えて「江戸東京博物館がいいんじゃないか」「モースの展示あるよ、大森貝塚!」「それでダメなら映画だね」とアドバイスし、報告を心待ちにしていた。
そして「江戸東京博物館は興味がないらしい。彼女の希望でイスラエル人とパレスチナ人の赤ちゃんが取り違えられるという内容の映画を見てくる」と意気揚々と出掛けていったヤマダは「全く不発!とにかくつまらない女だ」と怒り心頭で帰ってきた。
話題を振っても、映画の感想を言ってもまるで食いつかず、常に「そうですね」という返事しか返って来なかったらしい。「いいともかよ!」とヤマダは怒っていた。

そう言えば、高校時代の友人タクヤも婚活をしており、人から紹介された小学校教員の女性と数回会っているが「とにもかくにもつまらない人だ」と言う。
いや、そんなはずないでしょ、何かもっと「休みの日は何をしてるんですか」とか「僕は旅行が好きなんですけど」とか言ったらどこかには食いついてくるでしょう・・・と言うも、「そんな事は全部試してんだよ!無趣味な人らしいし、何考えてんだかわかんねえよ!」と怒られてしまった。そ、そうなの・・・ごめん・・・。

話を聞きながら、「つまらない人って、そんなにたくさんこの世にいるもの?」と、ものすごく不思議になったけれど、後になって気が付いた。
あ、そっか。
私は「つまらない人」って誰から見ても絶対つまらなくて、それこそ動物園や博物館に「つまらない人」という名前で展示されるような生き物で、物珍しくて逆に面白いんじゃないかと思っていたけど、そうじゃなくて、それは「その人にとってはつまらない」って意味だったのか。なあんだ。考えてみれば当たり前だけど、なーんだ。

でも、相手のことを「つまらない人間だな」と感じてしまったのなら、もうそれは愛情にはならないんじゃないか。
それでヤマダはすぐに「これはダメだ!」と、次のチャンスを探しに行くけれど、タクヤは「つまるつまらないの問題ではなく、家庭を共に支えられる相手ならばいい」と辛抱強く逢瀬を重ねている。

そうだ、そんな風に考えられるほどの年になったんだな、私たち。
もっと若い頃だったらその事を、「愛情のない結婚なんて打算的だ」とか「体裁整えたり、老後や親の介護のためだけの結婚なんて」とか「あなた、つまらない大人になったね」なんて責めていたかもしれないけれど、今じゃ「そっかー、まあそうかもねー」とちょっと困った顔して笑うだけだ。

そして心のなかで密かにつまらないことを考えている。
みんなが結婚して、遊んでくれなくなったら、つまらなくなるな、って。