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90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

大人買い/よき友

泡沫

徒然草の中で吉田兼好は言っている。
「よき友、三つあり。一つには、物くるる友。二つには医師。三つには、知恵ある友。」

ハッキリ言うわね、兼好。しかし全く、物くるる友はありがたい。
山友達のおじさんが時々、ふるさと小包のようにして、自分で作った柚子ジャムやら小魚の佃煮やらを送って下さるのだが、昨夜もそれが届いた。蕪の甘酢漬けや山芋のすりおろし、柚子ジャム。

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その中にコロっとS&Bの粉山椒が入っていた。
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あら、どうしたのかしら、とお礼かたがた電話を架けて尋ねてみたら、なんでもNHKの番組で山椒特集があったらしく、山椒をかけると味覚が刺激されて物の味を濃く感じる事ができるから、塩分控えめでも満足できる、というような事を聞いて家族がスーパーの棚にあったS&Bの山椒24本を全て買い占めてきたのだという。テレビの威力ってすごいな。いっぺんにこんなに大量に買うのか。

そう言えば、小学校の頃の友達、ともちゃんのお父さんは物を一つだけ買うという事をしない人だった。当時流行っていたビックリマンチョコをともちゃん姉弟が欲しがった時も、一つづつ買い与えるのではなくて箱で買っていた。お祭りに連れていってもらった時だって、フランクフルトを10本、お好み焼きを5枚、とまとめて買ってくれる。そして「みんなで食べなさい」と言ってフラッとどこかに行ってしまう。その気前の良さに、お祭り気分が高まってすごくウキウキしたものだ。
別にお金持ちなわけじゃないし、お金持ち気取りなわけでもない。おばさんはいつも「お父さん、またそうやってどんどんお金を使っちゃうんだから」と不満そうにため息をついていた。

先日の同窓会でともちゃんに再会して「昔、おじさんがいつもお祭りなんかで気前よくフランクフルトや焼き鳥を買ってくれたでしょう?」と言ったら、ともちゃんは「ええ?そうだっけ?」と全然覚えていないようだった。不思議なものだな。ともちゃんにはそれが普通の、よくある事だから記憶に残っていないんだろうか。
おじさん元気?と尋ねたら、病気であんまり良くないらしい。

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この前、友達にもらった「めずらしせんべい」と言うあまじょっぱいおせんべいがとても美味しかったので、浮かれて大きな段ボールひと箱注文してしまった。送料込で8000円分も・・・。
それで、ともちゃんのお父さんの事をまた、しみじみと思い出した。

今にして思えば、「お金もないのにこんなに買って!」とため息をつくおばさんの気持ちもすごくよくわかるし、おじさんの「一つだけの注文なんてできない」という気持ちもわかる。私もたまにケーキ屋さんでケーキを買おうとしても、1つだけは買えない。つい、2つか3つ買ってしまう。
それからおじさんの、些細な見栄を張りたくなる気持ちも、お祭り気分に浮かれはしゃいで「みんなで食べてよ!」と大盤振る舞いしたくなる気持ちもよくわかる。

さて、ともちゃんのおじさんみたいな気持ちで大人買いしたこのおせんべい。ともちゃんのおじさんみたいな気持ちで「みんなで食べてよ!」と気前良く配ってまわろう。
少しの見栄も張って、物くるるよき友みたいな顔もして。