DNA
親子というのはおかしな所が似るものだ。
弟の足の小指の爪は父のそれに酷似していて「DNAはこんな片隅までぬかりなく仕事をするもんだな」と驚いた。
また、自分の父親のせっかちな所がすごく嫌だと言っていた父の、今の歩き方や口癖やせかせかした感じは祖父にそっくりだ。母だって、自分の母親の、話を大げさにするところが嫌だ、私はあんな年寄りにはならない、と散々言っていたのに、どんどん祖母にそっくりになっていく。
昔、母が「おたるワイン」の広告を見るたびに「たおるワインて読んじゃうのよー」としつこく言ってくることに閉口したが、先日、酒屋さんの前を通った私の眼にも「たおるワイン」としてその文字が飛び込んできたので、ついにこの時がきたか・・・と思った。
ちょっと写真が汚いけれど、これは先日大人買いした「めづらしせんべい」のパッケージに貼られていたシールだ。初めてもらった時から「こんみりとした味」という言葉が気になっていた。こんみり、かあ。
母におすそわけしたら、袋を見るなり、母も言った。「あらぁ、こんみりって言うのねえ」
いやだ・・・同じとこ見るのね・・・。
両親共に、docomoのスマホユーザーなので、私がdocomoのスマートフォンに機種変更したことは、喜びを持って迎え入れられ、母はいそいそと、おすすめアプリなどメールしてきた。なんでも、まず最初に入れるべきはandollというウィジェットだとの事。
「なんだ、それは」と調べたら、なんでもAndroidのキャラクター、ドロイドくんが待ち受け画面に常駐し、あれこれ話しかけてくるウィジェットらしい。
そういえば、常日頃母がスマホに触るたびに「ちょっと太ったんじゃない?だって!生意気ね!」だの「あらやだ、この子、ヤケを起こしてるみたい!酒だ!だって。」だのといそいそちまちまと話しかけていた。
・・・何、あれは元々入っていたいたんじゃなくて、わざわざダウンロードしたの?私は入れないからね。余計なメモリ食うのはいやだから。
冷たく返事をしたら、「かわいいのに・・・」「今はサンタクロースの帽子もかぶってるのに・・・」と残念そうな返事が来た。
サンタクロース、ねえ・・・。
それで、なんとなく心惹かれて翌日ダウンロードしてみた。「ちょっとだけなんだからね!ものは試しなだけなんだからね!」と強がりながら。
一番最初の台詞はこれだった。
余計な心配させないでよ、いやあね。ていうか、サンタクロースの帽子、かぶってないじゃない!
ちょっとだけがっかりしていたら、次に立ち上げたときに、ようやくサンタクロースの帽子をかぶっているドロイドが出てきた。
それから「この辺は横浜市って言うんだってね」だの「○○さんと仲良しなの?」だのとコメントがでるたびに心の中で「あら、知らなかったの?」とか「そうなの」と返事をしている。
これが口に出るようになったら、そのまんまうちの母なのだ。ああ、恐ろしい。
その昔、思春期の私に手を焼いた母は言った。「アンタはあたしの子じゃない!盛岡の病院で取り違えられたに決まってる。あたしの本当の娘は今頃岩手の牧場でほっぺを真っ赤にして牛の世話をしてるのよ!」
・・・お母さん。お互い非常に残念ではあるけれど、いろいろな要素を検証するにその可能性は低そうね。