90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

酔っ払いは二度死ぬ

日曜の晩は再び同窓会があった。前回来れなかったあやちゃんは初っ端から結構なペースで飲み、笑い転げ、みんなに「あやちゃんてこんな子だったっけ~」「面白すぎ!」と言われていたけれど、二次会になって、足元のおぼつかない姿で絡み出してから、だんだんみんな心配になってきた。
「…大丈夫?」「なんか嫌なことあったのかね」「まだ子供も小さいから、色々大変なんじゃない?」
ちょうどその辺りで幹事があやちゃんのウーロンハイをウーロン茶とすり替えて、申し訳なさそうに言った。「ごめんな、アイツ、なんか色々あるみたいでさ。前に地元飲みした時もヤバかったんだよ」
うん…まあ、そうだろうね…。何もなかったらああいう飲み方しないよね…。

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紅緒さんも酒乱。

この前、豊川稲荷で参拝の列に並んでいたら、すぐ後ろに同僚どうしらしき男女がいて、女の子が「今年はもうお酒飲みません。ホント、あの日はどうかしてました」と言い、男性に「よくある!よくあるよ、気にしなくていいよ」と慰められていた。生きていると、どうかしちゃうことあるよね。

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どうかしちゃう紅緒さん

20代の初め頃、終電近くの電車に乗ったら、酔っ払った若い女性がどういうわけか片乳を露出し、「家出?」と言う程の大荷物に寄っかかって寝こけていた。しかも悪夢にうなされているのか「すみません!本当にすみません」と謝り続けている。
お、お、お、おっぱい出てるよ、お姉ちゃん!
付近に女性は私しかおらず、周りの男性が「君!彼女のおっぱいをしまってあげたまえ!」というような目で見つめてくるが、ムリムリムリ!無理ですって!
今なら私も年を重ねて、そっとハンカチか何かを胸にかけてやりつつ「大丈夫?お水飲む?」って言ってあげられるだろうけれど、あの頃の私には無理で、逃げてしまいました。あの人、どうなったんだろう。

若干の後悔を胸に抱えた20代の終わり、今度は路上で男の人が大の字になって倒れているところに遭遇した。しかも額は血まみれだ。
「ひいっ!」と息を呑んだけれど、ここで見捨てて明日死なれていても困る。震える指で人生初の110番に電話をしたら、警察はつまらなそうに聞く。
「倒れてる場所は歩道ですか、車道ですか?」…歩道ですけど?
「それじゃあ車に轢かれる心配はないから大丈夫ですね」
待って!待って待って!そういう問題?おでこから血が出てるんです!
必死で訴えるも警察官のテンションは上がらず「ああ、この時期ね、多いんですよ、酔っ払って路上で寝ちゃう人。額の血は転んで怪我したんでしょう。どうしてもって言うなら警察官が様子を見に行ってもいいですけど場所はどこですか」
あわあわと、場所を説明しようとしていた所、倒れていたおじさんは目を覚まし、亀のように這いずりながら遠ざかって行った。ミヒャエル・エンデの「モモ」のようなワンシーン。
「大丈夫みたいです」と警察に告げて電話を切った。
ひどいと思ったけど、警察、さすが百戦錬磨だな。わかってたのか、ただの酔っ払いだって。

・・・かつて、そんなことがあったのよ。
という話を友人にしたら、旦那さんがトラック運転手をしている友人は平然とした顔で言った。
「うちの旦那もさあ、前に酔っ払って、あたしが迎えに行くまでトラックで寝てたらしいんだけど、運転席から落ちたみたいで、地面に這いつくばって、デコから血は出すわおしっこはもらしてるわ、最悪だったよ」
・・・そ!その状態でちゃんと連れて帰ったんだ?
「そりゃそうだよ、ほっといたら死ぬじゃん。冬だし。風邪ひかれるのも迷惑」
すすす、すごいのね、けけ結婚て大変なのね・・・。見て見ぬふりしたい・・・。

日曜日「自転車で帰るーー!」と喚いたあやちゃんは無事に帰れただろうか。まさか路上で寝たりしてないだろうか。
あそこまで酔っ払えるのって羨ましいなとも思いつつ、あとで思い出したら死にたくなるだろうな、とも思う。
でも、あやちゃん、すっかり忘れちゃうタイプなんだって!