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90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

青春の後ろ姿

泡沫 野球・スポーツ

全国各地で甲子園の県予選が始まっていて、沖縄なんてもう準決勝だ。
神奈川は先週の土曜日から始まった。
なんだか春季大会の時期から今年はあんまり気持ちがのらなくて、来年こそは県大会を開会式から見ようと去年の秋に決意したのに、「暑いからいいや」とひきこもって開会式も敬遠。順当にいけばこんな感じかしら、とトーナメント表を眺めつつ、今年は有給をとってまで見に行かなくてもいいかなあ、と、ぼんやりしてる私の斜め前で、主任は「お!今日は横浜隼人と商大の試合じゃん!」なんて私よりノリノリだったり。
それでついついチェックしちゃったら、横浜隼人がサヨナラ勝ちで、高校野球の熱さを少し思い出した。
ああ、もう、すっかり夏なんだな。梅雨明けもまだで、じめじめしてたからまだまだ本当の夏じゃない気がしていたけど、もうとっくに本当の夏だったんだな。慌てて暑中見舞いの葉書も書いた。

毎日、帰宅途中には地元の農家の経営する小さなスーパーの前を通る。
野菜と仏花とお線香と小さな鉢花、それから自家製の糠漬けやお店でふかしたさつま芋を売ってるような、本当に小さな田舎の個人商店だけど、近所にコンビニもないので、この辺の高校生男子がしょっちゅうお店の前にたむろしている。時々焼き鳥のトラック屋台がお店の前でもうもうと煙をあげながらタレの匂いをまき散らして、女子のフェロモン以上に強力に高校生男子を惹きつけている。

そんなお店の前のこれまた小さな駐車場に、昨日の夕方、どう見ても野球部の坊主頭の男の子たちが自転車を停めて輪になって集まっていた。そして一人づつ真ん中に立って、神妙な顔で何かしら挨拶しては、みんなから拍手をもらっている。

あれ、あの学校ってもう試合終わったんだっけ、これって3年生の引退?
不思議に思いながらも、甘酸っぱすぎて、眩しすぎて、青春過ぎて、切なくて、そそくさと通り過ぎて家に帰った。

胸をきゅっとさせながら日程を調べたら、うちの近所のあの県立高校は、今日、古豪の高校とあたるらしかった。
ああ、あれはベンチに入れない3年生の挨拶だったのかな。
そんな想像をして、また胸をきゅっとさせつつ仕事中にネットで試合の行方を追っていたけど、5回コールドで負けてしまった。
昨日のあの子達、声を張り上げて応援していたのかしら。泣いたかしら。やるだけやったかしら。

秋も冬も春も、ママチャリの後ろにデカくてダサいカゴをつけて、野球道具をつっこんで、真っ黒に日焼けした顔でヒイヒイ言いながら坂道を登っていく群れをしょっちゅう見かけた。でも、あの群れから、また何人かが消えていくんだなあ。

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そうだった、毎年毎年いつも高校野球を見て、いつもこれが誰かにとって「最後の夏」であることを実感するんだった。
誰もが通りすぎてくる最後の夏。もう絶対に戻ってこない学生時代の夏。
見逃すわけにはいかないなあ・・・、と主任に「やっぱり決勝戦の日は休みます」宣言を出してきた。

青春の後ろ姿を人は皆忘れてしまうから、誰かの青春の後ろ姿を見送って思い出そうとしたりするのね。
だからって別に、あの日に帰りたいわけじゃあないんだけれど。

あの日に帰りたい

あの日に帰りたい