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90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

いたむ季節

ああ 人は獣 牙も毒も棘もなく
ただ痛むための涙だけをもって生まれた
裸すぎる 獣たちだ
        中島みゆき「瞬きもせず」

瞬きもせず

瞬きもせず

いつもこれは「痛むための涙」なのか「悼むための涙」なのか、ふと考えてしまって、個人的には「悼む」なんじゃないかと思いながら聴いていた。

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6月の盆栽教室では苔玉を3つ作った。そのうちの一つは桔梗で、ひょろひょろ伸びるわりには蕾をつける気配がまったくなかったのだけれど、やっとついた蕾はすごい速度で膨らんで、昨日の夜には紫色に色づいて、今朝になったら弾けるように咲いていた。

子供の頃、近所に割と大きな園芸店があって、温室もあれば池もあり鯉もいて、ちょっとした庭園みたいな作りだったから格好の遊び場にしていた。特に怒られることもなかったから、今思えばものすごく寛大なお店だったんだろう。その寛大なお店で私が何をしたかと言えば、売り物の桔梗の蕾を面白がって潰すことだ。
今でもこんなに鮮明に覚えているんだから、子供心に「悪い事をしている」という自覚はあったんだろう。

あれ以来、桔梗を見るたびに美しいと思いつつも、あの日潰した蕾のことを思いだして少しだけ胸を痛めた。自宅に桔梗を迎えてからは余計に胸が痛んだ。毎日蕾がふくらむのをこんなにも楽しみにしているというのに、あの日の私ときたら、なんて非道な真似を!!

夏は日差しが強いから、影がくっきりと濃く映るから、どうしても生きる事と死ぬことがくっきりと見えてしまう季節だと思う。
そんな季節に、遠い国の戦争のニュースに毎日胸を痛めている。
今日もまた、国連の学校を攻撃した、子供が死んだというニュースがあった。
イスラエル、再び国連避難所のガザの学校を砲撃―15人が死亡 - WSJ

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Heartbreaking Photograph Of One Father's Grief Reveals The Real Cost Of Violence In Gaza

子供を殺されてしまったお父さん。心も体も頭の中も、どれほど痛いだろうか。


美しい花を見ると、よく「ロミオとジュリエット」の中のジュリエットの有名な台詞を思い出す。
「名前ってなに?バラと呼んでいる花を、別の名前にしてみても美しい香りはそのまま」
同じように「国境って何?領土って何?宗教って何?どんな名前で分けても同じ人間では?」と思ってしまうのは、パレスチナ情勢も宗教問題もよく知らずに平和な国に生きている者の傲慢なのかもしれない。
ただただ悼むための涙を流すことしかできることのない人間の、甘ったれた発言なのかもしれない。
でも、どうしても戦争は嫌だ。こんな不毛なことってあるか。誰かが死んで何かいいことがあるか。

夕方、旺盛に葉を伸ばし、弦を伸ばし、蕾をつけ、幹を太くしていく草木たちに水をやりながら、そんな風に胸を痛めて、死者を悼む。