90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

わらしべ長者の才能

月日の経つのが恐ろしく早い(言い訳)
飛ぶように去る日々の中で、いろんな事がありました。末の弟に子供ができたり(3月誕生予定)、ついに出刃包丁をゲットしたり。

寒くなりはじめの頃はずいぶん気持ちが落ち込むもので「ああもうイヤになるわ。もう終活でもしてやるわ。いつでもお迎えが来たらいいわ!」とやけっぱちに身辺整理をするうちに、ふと目についたのは昔、清水の舞台から飛び降りるような決意でもって購入したル・クルーゼの24センチココットロンド。

当時デカ鍋を欲していたのは確かに私だが、先日豚汁を作ったらあまりのデカさに唖然とした。
・・・これ、末の弟にやろうかな。あそこんち、これから子供もできるし、あのオシャレ番長もル・クルーゼならば受け取ってくれるだろう。
それで先日実家で弟に会った時に、話をもちかけようとしてふと気づいた。待てよ?実家から出刃包丁を持ち出したのはこやつではなかったか?

「そういや、うずら氏さあ?ここんちから出刃包丁持ってっちゃったんだって?」
軽くジャブを入れてみると、弟は怪訝な顔をして答えた。「俺が持って行ったんじゃないよ。いらないっつったのに、一人暮らしするときにお母さんがむりやり押し付けてきたんだよ!使わないのにさ!」
・・・そう・・・。
あの時電話口であんなにも「あの子、うちのもの何でも持って行っちゃうのよ!」と被害者のように訴えた母の方をチラと見ると「そうだっけ?」とトボけ顔をしていた。

まあいい。それならば「出刃包丁、使わないならうちのル・クルーゼと交換しない?」と弟に持ちかけるまでよ。
案の定、弟は食いついてきた。「まあ、デザイン的にはストウブの方が好みなんだけどさあ」とオシャレ番長ぶりも如何なく発揮しながら。そして満足げに、こう呟いた。
「いやあ、なんだかわらしべ長者だなあ!」

わらしべ長者!確かに元手をかけずにル・クルーゼが手に入ったんだもんね。
しかし咄嗟にその単語がでてくるあたり、さすが我が弟。そう言えば怠け者の私、わらしべ長者の物語が大好きだった。あれは何をどういう風に交換して行ったんだっけね・・・と調べていたら、外国には「現代版わらしべ長者」がいるらしいことが判明した。

カイル・マクドナルド - Wikipedia

カイル・マクドナルドさん。カナダ人。赤いペーパークリップ一つを交換していくうちに、家を手に入れたらしい。
このマクドナルドさんの日本語版公式ブログがあるわけです。他人の事は言えないが「ほぼ毎日更新中」と謳いつつ、2009年3月から更新していない模様。

この人がどうやって家を手に入れたかなんて、正直どうでも良かった。ただ、彼のブログの記事タイトルに私は度肝を抜かれ、冬の午後のひと時を大笑いしてすごしたのです。

2009年3月25日「フランス語で書かれたメールを読んだがほとんど理解できなかった。」
2009年3月3日「発電機は見つかった!」
2009年2月23日「ガソリンが付着した僕の発電機は異臭を放っていたらしい!」
2009年2月13日「結局その日は電話が鳴りっぱなしだったんだ!」
2009年2月12日「クレアは確かにケベック中のカイル・マクドナルドに電話をかけていた!」
2009年2月10日「CBCの人はつんつんした声で電話をかけてきた。」
2009年2月9日 「電話によって目覚めた、電話は何かを運んできたらしい。」
2009年2月8日「徹夜をしてWebページを作り変えて、朝になってみたら妙にすっきりした気分だった」
2009年2月6日「ドミニクは寝てしまった!」
2009年2月1日「僕はまったく唐突にエヴィアンに電話をしたんだけど、エヴィアンは全てわかっているようだった。」
2009年1月24日「門番とのやりとり」
2009年1月16日「ステーキサンドの葛藤」
2009年1月11日「キャンプ用コンロの男」
2009年1月10日「メールを見るときはいつだって真剣になるんだ」

もちろん、英語を訳しているが故の不自然さはある。あるにはあるが、なんだこの西洋版ライトノベルのようなアニメの次週予告のような、シュールさ溢れるタイトルは!
大体、エヴィアンはなんで全てわかってるんだよ、ドミニクって誰だよ!キャンプ用コンロの男っていう、シャーロックホームズにでも出てきそうな名前はどうなんだよ!

すごいな、カイル。こんなに笑わせてもらったのに、笑いと交換に何も返せなくてごめんね。あなた何かやっぱり非凡な所のある人だと思うよ。

私はと言えば、久々に書いたブログ記事に、何の変哲もないタイトルをつけてしまったけれど、カイル風に書くなら「鍋と包丁の交換。そしてカイルは何かを運んできたらしい」ってとこかしら。・・・ボードリヤールみたいでちょっとカッコいいわね。

象徴交換と死 (ちくま学芸文庫)

象徴交換と死 (ちくま学芸文庫)

ちなみに「手に入れた出刃包丁ではまだ何も捌いていない。」(これもカイル風)

わらしべちょうじゃ (むかしむかし絵本 17)

わらしべちょうじゃ (むかしむかし絵本 17)