90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

排泄と礼節

おかげさまで無事にスペインから帰って来ました。
テロだとか、飛行機事故だとかのニュースの多い昨今、なんかもう絶対生きて帰ってこれないような気がして、神社にお参りまでしていたので、帰ってこれたのが奇跡のような心持ち。

これが時差ボケってやつなのか、本気で眠れない!…そんなら写真整理でもするか、と旅行中に撮った写真をせっせとGoogleフォトに上げる中でハタと気づいたことがある。
あれ。なんだこの既視感。
私、こういう写真、ハワイでもベトナムでも韓国でも撮ってるな…。
どこにいても、私が必ずカメラに収めてしまうもの。それはトイレ、マクドナルド、八百屋

友人に「スペインの写真だよ」と共有リンクを送ったら「説明を求めたい写真が何枚かあるが、いいね!」との返事をもらった。
…トイレのことなんだろう。そうだろう。

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これはベトナムのトイレ。水洗に見えるが水洗部分は壊れているので横のバケツで水を汲んで流すタイプ。そんなことに衝撃を受けて撮った写真。

そしてこれがスペインの男子用公衆トイレ。振り向けば奴がいるスタイル。
英国留学経験を持ち、貿易の仕事の関係で何度もヨーロッパに行っている友人鮭太郎(女子)は言いました。「明らかに便器の位置が高いんだよね」
その言葉を裏付けるかのように父は言っていました。「便器の高さが合わなくて。触っちゃいそうでイヤなんだよ」
すまない、共感できないし、したくないんだ。想像すらしたくないんだ。

こちらはトイレの鍵。およそスペインで入ったトイレで、ホテルであろうがなんであろうが、最初から備え付けてある鍵が使える所などなかったように思う。
みんなこれこのように後付の丸棒貫抜錠が取り付けられている。
…どんだけガチャガチャ回したんだ!そして、鍵そのものを直そうという気はないのか。鍵屋呼ぶくらいならコレつけとけばいいか☆って感覚なのか。誰も彼もがそうなのか!
…別に使用にあたって困りはしないが、あまりにどこもかしこもこれなので、疑問になる。なぜこの選択肢なのかと。
でもまあ、いいわ、鍵は。

トイレだよ、トイレ。トイレに便座がないんだよ。公衆トイレだと特に便座ない率が高い。
驚くじゃないですか。だって、ベトナムとか東南アジアに行くならそういう覚悟はしていた。失礼な言い方だけど「東南アジアは日本より遅れてる」とか「発展途上国」だとか言われていたから。
でもヨーロッパって先進国でしょ?ものすごい昔に産業革命とか起きてるんでしょ?日本よりもずっと優れているんでしょ?そんな噂じゃなかったですか?
それでなんで便座がないの、なんで!!

聞いたところによると盗まれたり壊されたりしてしまうらしい。
盗む!!便座を!!!なぜ!!!!

【イギリス】便座を万引き!元サッカーイングランド代表選手を御用

しかし、ヨーロッパではサッカー選手さえも便座を万引きするのだ。初めてこのニュースを聞いた時、相当な衝撃を受けたのだが、あの衝撃が今になって蘇る。…本当に盗む奴がいるんだ…便座を。それもウォシュレットすらついていない普通の便座を。

また、駅などの公衆トイレで順番待ち列に並ぼうものなら、前にいたヤングガールがにこやかな笑顔で「お先にどうぞ、あちら空いてるわよ」と便座なしトイレを譲ってくれる。「あら、あなたこそお先にどうぞ」と華麗にスルーしながら考える。
…やっぱ、スペイン人も便座が無いトイレを不便だとは思っているんだな。使いたくないんだな。…じゃあなんで便座がないままにしておくのか。

アレか、人は衣食足りて礼節を知ると言うけれど、便座も足りて礼節を知るのか。便座がないから、不足しているから窃盗行為が起きるのか。
無事に入れた便座ありの個室で腰掛けながら、まるで荒廃した学園に配置された熱血教師のように、しみじみ礼節と現状の打破について考える。スペインの政治家は選挙戦でトイレの充実について訴えれば勝てるんじゃないのか。

こちらコルドバの高速バスターミナル。ここのトイレは個室内に紙がなく、親切なおばさまが「あら、あなた!先にあそこの壁のペーパーホルダーから紙をとりなさい!中にはないわよ」と教えてくれる。トイレコミュニケーション。

まるで熱帯植物園みたいなアトーチャ駅のトイレは有料で門番のおじさんにお金を払わなければいけないらしく、手ぶらででかけた母は「お金がない!」と戻ってきた。そして「お金までとって便座がなかったら許さない!」と息巻いてトイレに向かう。
無事便座はあったらしいが、母はしみじみと言った。「日本のトイレって進みすぎているのねえ」
そうね…。フランスが美食の国なら我が日の本はトイレの国。ミシュランガイドのように星でもつけてやりたい気分だ。

昨今、地図記号でもなんでも外国人観光客のために変更していく動きがあるけれど、そんな中でしょっちゅう耳にするのが和式便器についてだった。
…そうでしょうねえ、外国人にとっては使いづらいでしょうねえ、可哀想に…、と同情的な気持ちでいたが、今になればふつふつと湧き上がる憤りを抑えることができない。
お前たち!!便座のないトイレを中腰で使ったり、土足で乗って使ったりしてるくせに和式便器に何の不満があるのか!そもそも気軽に入れるトイレがほとんどないくせに、どこでもここでもトイレを提供する我が国で調子に乗った発言するんじゃない!

これはアトーチャ駅にあった衛生用品の自販機。ムダ毛シェーバー、生理用ナプキン、タンポン…と明らかに女子向けな感じだけど、普通に広場においてあるんだな。日本だったら女性トイレの入り口にあるけどな。でもまあ、トイレにあると破壊されるかもしれないもんな、便座が盗まれ、デフォルトの鍵がどれもこれも壊れている国では…。

そんなこんなで、旅行の思い出話のメインはサグラダ・ファミリアでもガウディの建築物でもピカソでもなくトイレ。
「先進国ヨーロッパのトイレがまさかこの状況とは!」と驚きを告げると友人鮭太郎は苦笑して言いました。「ヨーロッパはもう斜陽よ」
斜陽か。…ではかつて輝いていた時代にはトイレもイケていたのだろうか…。
やはりトイレを基準に考えてしまう。
姉さん、僕はトイレ貴族です。

斜陽・人間失格・桜桃・走れメロス 外七篇 (文春文庫)

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