夜のバス
昨日、オペラシティで演奏会を聴いた帰り、渋谷まで行く路線バスに乗った。
薄暗い蛍光灯の光の下、乗客のまばらなバスで通る夜の東京は、知らない街のように見えた。
誰もが疲れを吐き出すようにしてそっと座り込み、ぼんやりとした目をしたり、窓に映る自分を見つめたりしながらどこかに流されて行く、この小さな空間は電車やタクシーとも違う時間の流れる、不思議な場所だな。
窓の外の、工事現場の眩しすぎる光を眺めながら、唐突にあの短歌を思い出した。
誰だったかな、あの歌。そうだ、穂村弘だ。
終バスにふたりは眠る紫の<降りますランプ>に取り囲まれて
なんだか、このバスの後ろの座席にも眠りこける二人の恋人がいるような感じがした。
この不思議な移動空間は、まるで「銀河鉄道の夜」のようで。
存在の不確かな人達が、そっと夜の東京を彷徨うような、春の始めの暖かな夜。
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