90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

春の悩みと言えば、花粉症と菜の花。
菜の花のおひたしや辛子和えがとても好きなのだけれど、あの旬の野菜は出始めから出終わりまで一貫して一束258円だ。
それを上回ることはあっても下回ることはない。少なくとも私は258円以下の菜の花を見たことがない。

それで毎回野菜売り場で悩むのだ。今しか食べられない。買うべき?今なの?258円、出す?
自分でも悲しくなるくらいに小さな悩みだ。250円のクリームパン買うくせに、菜の花にあと8円出すのを何故ためらうの?
うーん、今日はいいや、まだいいや、と見送っているうちに、店頭に菜の花が並ぶことも随分少なくなってきた。

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先日、お蕎麦屋さんで気持ちだけでも、と「春の彩りそば」みたいなものを頼んだら、少量の菜の花が入っていた。
それで急に心底焦りだす。
こんな冷凍みたいな菜の花しか食べないで、今年の春が終わっていいの?本当に?
いや、ダメだ。ダメダメダメ。ダメ、絶対。よし、買おう、菜の花。

いざ買おうとすると、もう出終わりに近いのかなかなか見つからず、二日間探してようやく買えた菜の花はやっぱり258円だった。
それで今夜は菜の花と浅利のパスタ。明日のお弁当は菜の花のおひたし。
お蕎麦に入っていた冷凍らしき菜の花と違って、ほんの少し苦味があって「ああ、そうだ、これが菜の花だった」と、一年ぶりに思い出した。
そうだった。春の食べ物はどれも少し苦味のあるものが多くて、その苦さで若々しさや春らしさを感じるものだった。

これで、菜の花に対する悩みが落ち着いたと思ったら、今度は竹の子に悩むのだ。
もうすでに500円の竹の子を一度見送っている。でも早くしないと、春が終わってしまう。
また、同時進行でグリンピースご飯のことも頭に入れておかなければいけない。


冬の間ずっと、今日咲くか、明日咲くかと待ちわびていた梅を見るために鎌倉に出かけたり、
桜が咲けば一生懸命時間を作って花見に行って、お値段に悩みながらも菜の花を買って
部屋にチューリップも飾りたいし、竹の子も食べたい。豆ご飯もいちごも食べたい。

春ってこんなに人を「早く、早く」と急かして振り回すのに、
それでもこうして春がきて、春に振り回されていることを幸せに感じるんだよな。
まるで熟年夫婦みたい。