90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

その先の日本へ

私鉄沿線育ちの者にとって、JRとはなんとも無骨な電車に思える。
私鉄が野口五郎なら、JRは高倉健みたいな。
まあ、これは「私鉄沿線」と「鉄道員(ぽっぽや)」そのままのイメージだけど。
大昔からあるので駅も古いし、乗り換えもわかりにくい。にも関わらず「昔からこうなんで」「自分、不器用なんで説明はちょっと」みたいな顔をされているような気がしてしまう。

かつて新橋のJR東日本系列のビヤホールでアルバイトをしていたことがあるのだが、そこの副店長が本当に怖いおじさんだった。
見た目が大地康雄に似ていて、それだけでも怖いのに、いつも不機嫌そうで、細かい事でよく怒る人だった。
私が小学校に上がったか上がらないかの頃に国鉄が民営化されてJRになったのだが、毎日のようにテレビのニュースで、国会で色々もめているらしい事やデモやストライキや反対運動の事が報道されていた覚えがある。
揉めに揉めた民営化の後で「リストラで鉄道マンの方々がずいぶんレストラン事業などに回され、彼らは不本意な仕事をさせられている」という話を聞いた。
思い込みの激しい私は、「副店長もきっと元鉄道員で、今は不本意な仕事をしているからあんなにいつも不機嫌なんだろう」と決め付け、勝手にやるせなく切ない気持ちになり、理不尽な事を言われても何も言い返せず、結局はアルバイトを辞めてしまった。

今にして思えば、なんという身勝手な思い込みの妄想ドラマの世界で生きていたのだ、私は。
しかし、子供心に「大人がみんな怒ったり泣いたりしてて、大変な事なんだな」と思った、あの国鉄のイメージをいまだに消し去ることができず、JRに対してどうにも複雑な気持ちを抱いてしまう。
JRの方はもうとっくに「その先の日本へ」進んでいるというのに。

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そんなJR東日本系列のパン屋さん。As Leaf
クリームにほんの少し、私の苦手とするたい焼きクリームの面影があって、その昭和テイストにまた、国鉄の面影を思い出した。

As Leaf(五反田店) クリームパン 170円
パン:黄身がかった柔らかいパン
クリーム:粘度高め。たい焼きクリームになる一歩手前でギリギリセーフな感じ
☆☆