90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

草食系

草食系男子、という言葉が生まれたのは2006年の事だそうだ。
まるで大発見のように世の中が「最近の男はガツガツしていない!」と騒ぎ立て、女たちは「草食系とか、ないわー!」と憤っていたが、男の子がガツガツしていない事は、そんなに新しい発見であろうか。

大学時代に齧った社会学では「やさしさの時代」などというタイトルで「だれも彼もがみんな曖昧なやさしさを求め、傷つかないように他人と距離をおく」という内容の授業を受けたし、そこでは田中康夫の「なんとなくクリスタル」や、吉本ばななの「キッチン」などが例に挙げられていた。大人たちは皆口癖のように「若者に覇気がない」とか「シラけている」とか言っていた。

90年代の中頃、小沢健二が「渋谷系王子様」として崇められていた頃に、おじさん向け週刊誌(文春とか新潮とか)に載っていたコラムの内容を私は奇妙なほどよく覚えている。
小沢健二の「ぼくらが旅に出る理由」という曲の2番の歌詞「それで僕は摩天楼で君に宛て返事を書いた とても素敵な長い手紙さ 何を書いたかはナイショなのさ」という部分を引用し、「男が女に向けて甘い手紙を書き、あまつさえそれを周りに言いふらす事が受け入れられるような時代になってしまったのか」という筆者の衝撃がつづられていた。

極めつけは1984年に中森明菜が歌った、売野雅勇作詞の「十戒(1984)」
「過保護すぎたようね 優しさは気弱さの言い訳なのよ ハッパかけたげる さあカタつけてよ」「優しいだけじゃもう物足りないのよ 今の男の子 みんな涙見せたがり 甘えてるわ止めて 冗談じゃない」

今更「草食系」のなんのと言わなくても、1984年には既にこの曲が「わかるー」と受け入れられるほどに世の男の子たちはヤワだったはずではないか。女たちは皆、20世紀から今日に至るまで、ずっと、ずーーーーーっと、坊やたちに憤って生きてきたではないですか。昨日今日突然、彼らがガツガツすることを止めた訳ではないではないですか。

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ベローチェ(製造元:株シャノアール)クリームパン 140円
パン:すごく甘いふにゃふにゃパン
クリーム:パンの甘さに負けてる。風味のない、なめらかで甘いクリーム
☆☆☆


さて、草食動物と言われて頭に真っ先に浮かぶのはヤギや牛ですが、このふにゃふにゃのヤワなパンを食べて「草食系ってカンジー」と、口をもぐもぐ動かしていたあの時の私も相当、草食系っぽかったと思われる。体中からヤギっぽさがほとばしり出てたはず。手紙の一つや二つ、簡単にむしゃむしゃしちゃうくらい。