90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

賞味期限

地震のあと、当たり前だけれど災害用の食品を頻繁に見かけるようになった。長期保存水、長期保存リッツ。長期保存ようかん・・・そしてロングライフパン。賞味期限は60日間だそうだ。
商品の説明には必ず書いてある。「賞味期限が長い!災害時の備えにも!」
・・・備えといっても2ヶ月だ。2ヶ月に一度は災害用品の確認をしなくてはならない。もちろんそれが理想であることはわかっている。しかし、本当に自分にそのようなこまめな確認ができるのだろうか。半年後にハッ!!と気が付いて、恐る恐る災害時用バッグを開けて、色とりどりのカビを生やしたパンにギャーーー!!と飛び上るのではないか。
ロングライフパンを食べるたびに毎回そうやって賞味期限がうっかり過ぎてしまった後のことを考える。

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以前に職場のお土産でごまたまごプリンを頂いた。
真空パックにされているあれも賞味期限は60日であった。たまご型容器に名前を書かれ「冷蔵庫に入れておきましたから食べてくださいね」と言われたが、なんとなく気が向かずに放置していた。
「来月末まで大丈夫ですから!」「今月中ですよ!」「ちょっと、そろそろ食べてください、ヤバイですよ!」
アルバイトさん達の必死の注意も虚しく、賞味期限が切れて4日後、まるで天の啓示のように、突然無性にあのごまたまごプリンが食べたくなった。

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皮肉なものである。「まだ賞味期限に余裕があるから」という時には食べる気にならないのに、賞味期限が切れた後になって、それが何よりも魅力的な食べ物に見えるのだ。
やはり、人間、簡単に手に入るものよりも手に入りづらいものに魅力を感じる、というヤツなのか、隣の芝生は青く見えるというヤツなのか。腐りかけが一番旨いというのを本能的に知った上での行動なのか。
賞味期限が過ぎている事に変に興奮しながら嬉々としてあのプリンを食べた。美味しかった。

D-plus 天然酵母パン クリームパン 160円
パン:黒糖みたいな味。
クリーム:くせのない、普通のクリーム
☆☆☆

ところで、この賞味期限が60日のパンは何日くらいでカビが生えたり、クリームが緑色になったりするのだろうか。
うっかりして、色とりどりのカビが生えてしまった姿も、本当はちょっと見てみたい気がする。
それより何より、賞味期限を1週間ほど過ぎたこのパンを食べてみたい気がする。
きっと、毒キノコにあてられたかのように興奮して「キキキ」と笑ったりするんだろう、賞味期限というピリオドの向こうの魅惑の味に。