90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

それを言っちゃあお仕舞いよ

男はつらいよ」のおいちゃんと言えば下條正巳しか知らなかったのだけれど、あの人は3代目だったのだな。

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家の近所の和菓子屋さんのおじさんが、ああいう感じの人で、いつも白い作業着の下にきちんとワイシャツを着てネクタイをしめている。それで、あの独特の匂いのする包装紙で和菓子のパックを包んでくれたり、皺皺の手で綺麗に紐をかけてくれたりするので、毎回胸がきゅっとする。

昨日行ったパン屋さんにもそういうタイプのおじさんがいた。特に期待もせずに入って、並んだパンを眺めていたらニコニコしながら「たくさんあるからねえ、迷っちゃうでしょう」と後ろから声をかけられた。
そういうのに慣れていないから、慌てて選んだのだけれど、本当は嬉しかった。白い作業着の下にワイシャツを着て、ネクタイをしめて、不器用そうに「はい、ありがとね」と紙袋にパンを入れてくれるおじさんの後ろには木彫りの大黒様が置かれていた。

いつもあんまり開いている所を見たことがないような気がしていたお店だけれど、商品のラインナップを見ても、お店の清潔感を見ても、つぶれそうな感じは全然なくて、塾に行く前の小学生が「下さいな」と買いにくるようなお店で、そこにもキュンとした。

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市ヶ尾ベーカリー(横浜市青葉区市ケ尾町) クリームパン 110円
パン:柔らかい
クリーム:粉が強め。たっぷり入ってる
☆☆

そういう、キュンとするタイプのお店のクリームパンは残念ながらあんまり美味しくないことが多い。ここのクリームパンはそんなに悪くはない。ただちょっとクリームの粉が強くて、時々ダマになってる。
でも言えないよな、そんなこと。あんなに実直そうで人のよさそうなおじさんに「はいありがとね」って差し出されたクリームパンにさ、そんな事言ったらあのおいちゃんを悲しませてしまうもんな。寅さんのおいちゃんみたいに「出てってくれ!」って言われちゃうもんな。「それを言っちゃあお仕舞よ」って事になっちゃうもんな。
と、大人しくダマを飲み込んだのでありました。