90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

ドーナツこわい

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10代の頃、上の弟は盗んだバイクで走りだして保護観察処分になった。それで実家に引きこもっていた弟を訪ねた所、弟はさも不機嫌そうな顔で言ったものだ。
「まめちゃん、ざわざわ森のがんこ、見てる?」
あ!ああ!ああ!あの、教育テレビでやってるやつですよね?ピンクの恐竜的な?ま、まあ時々?見てるけど?
「そう、あの、がんこさ、マジ性格悪りぃよな。俺、すげえムカついてんだけど」
・・・ああ、そう。何?あなた、保護観察処分で家に引きこもってるくせして、毎日教育テレビ見て過ごしちゃってるんだ・・・。しかもそんなに真剣にがんこちゃんに腹立ててんだ・・・そう・・・。お母さん、大丈夫よ、この子、これ以上悪いことできないわよ、絶対。

我が家は姉弟全員教育テレビが好きで、風邪をひいて学校を休めば中学生になっても高校生になっても日がな教育テレビを見て過ごした。大人になってからだって歯医者さんのテレビ付き診察台で、何が見たいか聞かれればピタゴラスイッチを選択したものだ。
しかし、30を過ぎたら教育テレビと私の間に決定的な溝が生まれてしまったような気がする。村上春樹的に言えば、教育テレビとの間にあった親密さは失われてしまった。Eテレなんて呼び名に変わったのが原因だろうか。まあ年齢的に当たり前すぎる事であるし、別にそれで困ることはないのだけれど、びっくりした。

まず第一に「シャキーン!」という番組のウゴウゴルーガ焼き直しみたいな感じが理解できず、ジュモクさんのキモさに毎朝「キモ!」と震え上がった。なら見るな。

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それから、「おかあさんといっしょ」の中の「パンパパ・パン」という歌が恐ろしくて子持ちの友人に「何あれ!」と助けを求めた。パンを被った大人たちが「私の彼は焼きそばパン、やきもきっ!」などと歌い踊るのだ。焼きそばパンのはみ出た焼きそばが妙にリアルで恐ろしかった。友人は「ああ、大人は怖がるよねー、うちの子どもはあれ、大好きだけどね」と朗らかに笑った。

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そして何よりおさるのジョージ
以前、8時半からの高校野球開会式を見ようとしたら高校野球の放送開始は8時45分からで、それまでの15分間、「ドーナツこわい」という回が放送されていたのをうっかり見てしまったのだが相当大変な番組であった。
まず「黄色い帽子のおじさん」なる、金持ちのお坊ちゃん的な男子が、なんと猿にゼロという数字の概念を教えこむ。それで調子にのった猿は、おつかいに出てドーナツを1ダース買うべき所を100ダース発注するのだ。あまりに大量なドーナツに猿は震え上がって逃げ出すが、大量発注に浮かれたドーナツ屋はそれを許さず猛追。黄色い帽子のおじさんに怒られるとふんだ猿は、カーテンレールや椅子の足など、あらゆる所に1200個のドーナツをはめ込んで証拠隠滅を図るも、請求書が届けられる。ドーナツ1個130円として15万6000円。あまりの高額請求に「ハハ、とんだ間違いだな」と笑うおじさんがようやく100ダースの存在に気付く。おじさんは「どうするんだよ、食べきれないよ」と困った顔をした後で言うのだ。「お前・・・ちゃーんと、勉強してたんだな☆」そして、働き者の消防士さん達に100ダースのドーナツを差し入れしてめでたしめでたし・・・なワケないだろう!!!!
16万近い損失に何故笑っていられるのか、そもそも猿にドーナツ売りつけるドーナツ屋もどうか!だいたい店に猿と犬がこけつまろびつ入ってきて、よくドーナツ売る気になるもんだな!

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・・・と、あれほど私を混乱に陥れた「おさるのジョージ」を、昨夜もう一度見てしまった。huluのキッズコンテンツに「おさるのジョージ」があったんだもの。何度見てもいろいろおかしい。「ドーナツこわい」って言うより、猿、お前の行動が怖い!
・・・なんて震えつつ、家で一人「おさるのジョージ」なんか見てるいい年した自分も怖い。相当怖い。

今週のお題「姉妹・兄弟」