変わり果てた姿
頂き物の柚子ジャムをおすそ分けしようと、実家に寄ったら、母が「あなたに渡す物があったはず!メモ、メモ!!」とバタバタし始めた。
そうして探し出されたメモには書いてあった。「まめさん:枕、お茶、うそ」
なに、その三題噺みたいなラインナップ…。
しかしそうか…。
覆水盆に返らず - 90億の神の御名
この記事で書いた、例の木彫りのうそと感動の再会をする時がついに来たか。
傷だらけの体でビニールポケットの中に横たわっている姿は無残な遺骸のように見えるが、取り出して立たせてみると、無邪気に笑う。
こんな間の抜けた顔だったかしら、この子。
底には「91年2月 横浜ババより」と母の字で書いてある。ババって・・・。
横から見ると、憂いに満ちた表情のようにも見えてくるが、それもそのはずだな、こんなに無残に尻尾を切り取られているんだもの。
母は「最早、ただの緑の虫みたいになっちゃってるけど」と言っていたけれど、この姿は緑の虫と言うよりも…落ち武者?そうだ、落ち武者だ!
一度そう思ったら、もう落ち武者にしか見えなくなってしまった。
・・・なんと変わり果てた姿になってしまったのだろうね、お前。
まあ、尻尾があったところで、間の抜けたお顔に変わりはないのでしょうが。
ビクターの犬のようにしばし首を傾げてこの子と見つめ合った後、この子とお茶を鞄に入れて、枕は腕に抱え、夜空を見上げて星を数えながら歩いて帰った。
端から見たら、ずいぶん変わった姿に見えたことだろう。