90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

~し続ける

~し続ける:keep ~ing、to continue ~ing

頻出イディオムにこんなのがあったっけ。

一つの事を黙々とやり続ける、という事に子どもの頃から強い憧れがあった。
きれいに編んだ駕籠や鍋敷きを見れば、編み目を辿りながら「こういう事をして一生暮らしたいな」と思った。
大好きだった「大どろぼうホッツェンプロッツ」というドイツの児童図書の中に、一日中じゃが芋の皮むきをさせるという罰が出てきたが、あれに憧れるあまり、学生時代スエヒロ築地本店の厨房の片隅で一日中じゃが芋と玉ねぎの皮を剥き続けるというアルバイトをしたくらいだ。パートのおばさん達は気の毒そうな顔で私を見ていたが、私は嬉々として毎日ダンボール一箱ずつのじゃが芋と玉ねぎに取り組んだものだ。
ついでに、一日中CDや歌詞カードをケースにセットするという仕事もしたことがある。レミオロメンのニューアルバムだった。ああいうのは東南アジアなどでやっているのかと思っていたら、近所の工場でやっていたのだな。

大どろぼうホッツェンプロッツ (新・世界の子どもの本―ドイツの新しい童話 (1))

大どろぼうホッツェンプロッツ (新・世界の子どもの本―ドイツの新しい童話 (1))

だから、友人たきこがおせちを詰める短期バイトで、一日中トコブシをお重に詰めてきた、というのも「いいな」と思ったが、タキコは憂鬱そうな顔で言った。
「アンタ、あれも大変よ。トコブシ補充するお兄ちゃんが、向きも何も考えんで補充するもんでケンカしたわ」
・・・そう・・・なかなか珍しい種類のケンカね・・・。

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一日中、信玄餅を風呂敷に包み続ける仕事にも憧れるけれど、あれも厳しい研修などがあるのかしら。

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ハロウィンに食べた、シャトレーゼの黒猫ケーキ。耳は三角のチョコレート。「こういう耳を一日中さし続ける仕事ってどう思う?」と言ったら弟に「人の技量によって、◯◯さんの猫は不細工、なんて言われる事もあるんだろうね」との事。そうね・・・。

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これは夏に青春18切符で二本松に行った時にお土産で買ってきた玉羊羹。ビニール袋に包まれたとても質素な身なりで、駄菓子みたいなものかと思いきや、とても美味しい羊羹だった。久々に体験した、ゴムを楊枝で突くとぷるんと飛び出す感じに打ち震え、何かの会話で盛り上がっている両親と祖母の横で、「ねえ、全部私が剥いてあげようか?」と思っていた。玉羊羹を剥き続ける仕事があればいいのに・・・。まあ、それなら、そもそも玉羊羹である必要がないんだけど。

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okkoさん(id:okko326)の
■老舗のプライド ③五勝手屋羊羹 - ひぐらしPCに向かいてという記事で紹介されていた五勝手屋さんの丸缶羊かん。筒についている糸で切るというのに心惹かれて、すぐさま購入して友達の家で食べた。「私が切ってあげるからどんどん食べてね」といそいそと。薄切りの方が上品かしら、でも食べでがあった方がいいわね、と欲張っていたらずいぶん不細工な切り口になった。
最期の糸を入れながら、「あーあ、ずーっとこうやって羊かん切ってたいな」と言ったら「あなたって本当に、昔からそういう子だったね」とお墨付きをもらった。

いつか、そのうち一つのことだけを延々し続けて日が暮れるという幸福な日々を過ごすことができるのかしら。