90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

命みじかし

チャンスの神様は前髪しかないから、やってきた時にすぐに前髪をつかんでおかないと、振り向いて掴もうとしても手が滑って掴めないんだそうだ。
初めてそれを聞いたのは中学生の頃で、友達とお弁当を食べながら「どんな髪型だよ」「相当脂ぎってるね」と笑った。今でも同じように「どんな髪型だよ」と思うし、ビリケンさんみたいな姿を想像している。

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昔、お客様から奇妙なクレームが発生して困ったことがある。
千秋楽間近の舞台を見に来たお客様が公演のビデオ撮影をしたい、と言うのだ。法律で禁じられているのでやめて下さいとお願いしたところ、お客様は怒り心頭で言った。
「それじゃあもう見れないってことじゃないですか!!!」
そうなんです。舞台は一度限りのものなのです。
でも今の時代、なかなかそれを理解してもらうのは難しい。

子供の運動会で撮影しない親御さんなどほぼいない。「小学1年生の運動会は生涯1度きり」だけど、録画しておけば何度だって見れる。卒園式も入学式も結婚式も成人式も。それらすべてをまとめて結婚式で流すことだってできるのだ。
スポーツだって1回きりの勝負だけれど、録画しておけば繰り返し何度でも見れるし、名勝負と呼ばれる物はyoutubeでだって見ることができる。

クレームを受けた私でさえ、どこかで「何度でも見れる」ことを当たり前のように思っていた。だから時々友達と話をしながら「もう、あのキャストであの公演を見ることは絶対にできないんだねえ」と愕然としたりするのだ。

世の中の技術がどんどん発達してモバイル端末でどこにいても映画やドラマや写真を見れる時代で、好きなものを何度でも好きなように楽しめることが当たり前のような時代にいるから、時々「もう見れない」ものがあるとひどく驚いてしまう。
それが舞台のようなナマモノならまだしも、映画やドラマが「もう見れない」状態だと特に。

だから、見たいものは見れるときに見ておくべきだよね・・・と自分に言い聞かせて、3月はゴダール特集やってた映画館に通い詰めていた。
そして、久々に会った知り合いが
「国立モスクワ音楽劇場の白鳥の湖が見たいの。バージョンがすごく良いの。都合のいい日が2日間あるけど2日とも行こうか1日だけにしようか、どの席で見ようか迷ってるの。1階からも2階からも見たいの!」
とアツく語るのに対し「もう2日とも行っちゃいなさい、今しか見れないんだから。次にいつ見れるかわかんないんだから」と厳かな神託のように告げたりする。他人を許し、自分をも許す精神で。

そんなワケで明日はNHKホールでバレエの饗宴見てくる。
私の大好きなNoismが出るので。
そして明後日はくみちょうさん(id:Strawberry-parfait)の個展にお邪魔して参ります。うふ。

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