90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

お前の道を

その昔、「ラストソング」という映画があった。ミュージシャンを目指す若者の青春物語で、いよいよバンドが九州から上京しようとする中、ビビる吉岡秀隆本木雅弘がキメ顔で言うのだ。
「俺がお前の道を照らしてやるよ」

ラストソング [VHS]

ラストソング [VHS]

あれはカッコよかった。
北野武監督「キッズリターン」で言うところの
「マーちゃん、俺たち、もう終わっちゃったのかな」
「バカ野郎!まだ始まっちゃいねえよ」
と同じくらいに。

同僚のタカハシさんが冬の初め頃から静電気がひどいと悩んでおり、二人して「ブレスレットは効かないんだって」「カー用品が割りと優秀らしいよ」なんて言いながら静電気除去グッズを探していた。
結局タカハシさんはぺんてるあたりから出ているキーホルダー型のものを購入していたがこれが結構すごいらしい。
静電気が消えていくのを目視で確認できる上にそれをキーホルダーの中に蓄電できると言うのだ。そしてその蓄電した電気を使って夜道を照らすこともできるらしい。
すごい、すごーい!とチーム中みんな笑顔で静電気問題一件落着。

暗い夜道はピカピカのタカハシさんのライトが役に立っていることだろうクリスマスイブ。
今宵これから、真っ赤なお鼻のトナカイさんがサンタの夜道を照らし続けることになるであろう、クリスマスイブの夕方、私は職場で鼻を押さえて悶絶していた。書類戸棚に盛大に鼻をぶつけて。
目の前が白くスパークし、「オウ!」とも「アァ!」ともつかぬ呻き声をあげ、鼻血を出してトイレに駆け込むクリスマスイブ。
マスクで顔を隠して帰路に着いたが鼻が痛いったら。
よりにもよって今日!この憂き目に!サンタの手伝いでもしろという神様からの指令なのか。そうか。

絶対この後、腫れる、という予兆に満ちた鼻を抱えて、マスクの中、私は密かにあの映画のモッくんみたいなキメ顔で言ってやったよ。
「サンタ、俺がお前の道を照らしてやるよ!」

メリークリスマス、ミス赤鼻。

赤はなのトナカイ ルドルフ

赤はなのトナカイ ルドルフ