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90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

私は貝になりたい


貝にな! …この前築地に行ったもんで貝の写真なんかいくらでもあるんだぜ。

さて、先日は相撲ファンの先輩つるちゃんと夏場所初日に行ってきた。
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幕下力士の取組を横目に昼間からビール飲んで焼き鳥食べて、しみじみと語り合う。
「昔は関取なんてみんな自分よりもずっと大人だったのに、気付けばみんな年下になっちゃったよ」
「わかる!プロ野球選手名鑑見ても32歳くらいで既に“まだ老け込む歳ではない”とか書かれてるしさ」
「我々の年齢でまだ現役だったら、レジェンドとか呼ばれちゃうしね」
…そうね、レジェンドね…。
それでも、こんな年になってもやっぱり、土俵上やグラウンド上で素晴らしい戦いをしている人々は皆、自分よりずっと立派な大人に見える。

思えば、子供の頃、読書感想文のために読んだ本の中の登場人物達だってみんな自分より立派で、感想文にはいつも「こんな状況でも諦めない◯◯はすごいなと思いました」みたいな事を書いていた。
いつか自分が大人になったら、そんな風に思わなくなるのかなと思いきや、いまだに本や漫画を読んで「え、この年でこんなに大人なのが普通?私がダメなの?」とヘコむことも多い。

近年、私を一番ヘコませたのは、吉田秋生の「海街ダイアリー」だ。
連載開始当初まだ29歳の長女、幸姉は異母妹を引き取って育てることを決める。喪主挨拶まで引き受ける。…私、喪主挨拶なんて出来ないし、ご葬儀の段取りもよく知らない。
1年後、30歳になった幸姉は、法事の際、義母の再婚に腹をたてる妹を叱る。
「思ったまんま口にすりゃいいってもんじゃないのよ!」

この言葉は、言動で失敗しやすい私の胸にぐっさりと突き刺さったのだけれど、人はなかなか成長しない生き物。

国技館にて、つるちゃんと力士の入り待ち中、向こうから安美錦の付き人らしき人がやってくる。
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うきうき浮かれていた私は大声で言いました。悪気はなかった。
「つるちゃん!あの人、スイカみたいな着物着てるね!
つるちゃんはゲラゲラ笑いながら言いました。
「まめ、思ったことをそのまんま口にしないのよ

…ああ、やってしまった。
まあ、笑ってくれてたからいいだろうと自分を励まして、でもヘコむ。まるで余計なおしゃべりをし過ぎた飲み会の翌朝みたいに。
今まで何度も「もう二度と余計なことを口にしない」と誓って生きてきて、いまだにこのザマよ。幸姉はあんなに大人だというのに。
帰りの電車の中、「思ったことをそのまま言う」とGoogle検索すると様々なアドバイスが出てくる。「そういう生き方は損をします」「友人を失います」「ヤクザの前でも同じことが言えるんですか」「アスペルガー症候群の兆候です」

ああ、ああ、もう、ホント、次に生まれ変わるなら私は深い海の底で物言わぬ貝になりたいわ、貝に!

私は貝になりたい <1959年度作品> [DVD]

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サウダージ

サウダージ

山へ行くつもりじゃなかった

Three Cheers for our side ~海へ行くつもりじゃなかった

Three Cheers for our side ~海へ行くつもりじゃなかった

このGWは久々に友人Tと星を見に出かけた。星を見ると言ったって、今回の目的地はナントカで日本一の星見スポットと認定されたらしい、長野県の阿智村という所で、ロープウェイで行ける山の上でイベント的な星空観賞会をサクっとやって帰るとの事だ。

【公式サイト】スター★ビレッジ 阿智〜日本一の星空の村〜

当然トイレもあるだろうし、それなりに施設も充実していることであろう、いつもみたいに人里離れた山奥じゃない。何より雨予報だ。大して星も見ずに帰ってくることだろう。
そうタカをくくって、寝袋はおろかダウンジャケットもネックウォーマーも手袋も持たず、雨具と毛布、それに薄手のメリノウールを着込んで出かけた。なんたって5月だ。


途中、ワイナリーでカパカパとワインを試飲したり(私だけ)、元善光寺なるお寺に立ち寄ったり、ムキになって蕎麦屋を探したりしながらロープウェイ乗り場へ。
駐車場の時点で、うん、これは寒さが予想されるな、と持ってきたパーカーと雨具を着込んで毛布を持って。

標高1600mまでがんがん上っていくロープウェイの窓から入ってくる冷気。
ヤバい、結構寒いんじゃないか、これは。

この建物前の芝生にシートなど敷いてイベント開催時刻を待つワケですが、まわりの方々はダウンジャケット着たり、テントや寝袋を持参していたりする。吹き付ける強風。パラつく雨。

我々は久々すぎて星を見るという行為を、山を、ナメていたのではないか。
5月だろうが、イベント地だろうが、サクっと終わる予想だろうが何だろうが、星を見に山に行こうと思ったら常に寝袋やスキーウェアなどという最大装備が必要だったのでないか。
ガタガタ震えながら何度もそう口にし合った。「まあ、それでも何も知らない人より少しは装備してきたけどね」などと強がりつつ。
イベント中に雨脚が強まり、屋内に避難して係の人から星の説明を受けて下山。
いやいやいや、今後は山をナメたらいけないよね。

その翌日。朝食を食べ終わって、さて、どこに行くかと寺でもらった観光パンフレットを眺めていたとき、ふと千畳敷カールの写真が目に止まった。
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ああ、ここ、よくクラブツーリズムなんかのバスツアーで紹介されてるんだよね。ちょっと憧れだったんだー、いいなあ、と口にすると、「すぐ近くだから行ってみるか」とのこと。
ええー?本当に行けるの?GWだから激混みじゃないかしら。でも嬉しいー!高原のお散歩できちゃうんだ。
うきうき浮かれながら菅の台バスセンターという所で車を降りる。ここからマイカー規制だからバスでしか行けないらしい。
バスセンターのおじさんが「山の上は強風です」というので、とりあえず持っているありったけの装備はしていく。

こんな山道をバスで上るうちに、我々はまたしても顔をひきつらせながら確認し合うのである。
「これ、ヤバいぞ。相当寒いぞ、スキーウェアや寝袋は常に車に積んでおくべきだったな」
「我々は、ついうっかり山に入ってしまう傾向があるんだね。常に備えておかないといけなかったね…」

バスに揺られること30分。標高1600mのロープウェイ乗り口から13分で一気に標高2600mまで上る。
そして目を疑うのだ。

な!!な!!なんじゃこりゃーーーー!!!


ご、ご、5月なうですよ。大相撲なんか夏場所が始まるんだぞ。それなのに標高2600mの神々の山嶺にはまだ春すら来ていないのか!
まさか5月に、雪に足をとられて息を切らし、穴ぼこにハマって尻もちをつくだなんて!さっきまで「高原のお散歩」とか浮かれていた自分を張り倒してやりたい。
雪がとければお散歩コースになるのであろう通路の入口には物々しく書かれている。「ここから先、冬山完全装備で!(アイゼン、ピッケル等)」
この景色を見れば当然だ。

これが正しい装備。
ニューバランスリーボックなんかお呼びじゃないのだ。

気温は5度。夏、もう一度ここへきてこのホテルに泊まって星を見よう、とリベンジを誓って下山して光前寺やら天竜峡やら。うららか。


遠くに千畳敷カールが見える。

ねえ、私たち、さっきまであそこで寒さに震えてたんだよね。何の努力もしないで、簡単に標高2600mまで行って帰って来れちゃうなんて、なんだかすごく不思議だね。
…と山を振り返って、ぼそぼそ話し合う。

行き当たりばったりでふらっとあんな山の上まで簡単に行けちゃうからこそ、ボーイスカウトみたいに「備えよ常に」だね。これからは寝袋とダウンジャケットはいつも持ってくるよ。だって、山へ行くつもりじゃなかったのについふらっと行ってしまったりするんだもの。
あーあ、そんなことができるなんて、なんて贅沢!なんて幸せ!

奥の細道

明日からGWか、1年て早いわねえ、やれやれ…と思いながらマキシスカートの丈上げにいそしんでいた4月28日、20時30分。
1通のメールが舞い込んできた。タイトルは「稽古総見」
劇団勤務時代にはよく耳にした懐かしい言葉だ。しかし舞台ではなかった。
「まめ、明日稽古総見行く?7時から11時くらい。両国国技館
差出人は相撲ファンの先輩つるちゃん。場所が国技館と来たら、これは。
相撲か!!

7時に両国国技館。ということは朝5時半の電車に乗らなければいけない。そして山登りをたしなむようになってからの私は知っている。朝5時半の電車に乗るためには、5時始発のバスに乗らねばならないということを!つまり4時起き!築地以来の4時起き!こいつはてえへんだ、てえへんだー。
すぐさま裁縫道具をしまって風呂に入り、カメラの電池を充電して眠る。

6時30分両国着。国技館前は既に長蛇の列。ひえー、目が覚めるぜ。
「つるちゃん着いたよ、並べばいいの?」とメールをすると「今起きた!すぐ行く」とのお返事。マジか。横綱級の驚き。しかし心は新十両のようにおどおどしながら列に並んでいると「7時半には着くよ、せっかくだから桝席座っちゃいなよ!」との続報メール。こうしている間にも列はどんどん伸びていき、もはや両国駅前まで届く勢いだ。こんなんで桝席なんて座れるのかしら・・・と思いきや向正面の桝席取れたよ!!人生初桝席。


まずは幕下力士から。こんな感じで立ち並ぶ尻に見守られる中で取組んで、負けると交代。朝7時よ?なんか部活の朝練みたいだ。

取り組みが終わると見守っていた男たちが「次は俺!」「いや俺だ!」とアピールを始める。つるちゃん曰くあのアピールで「やる気がある」と思われたりするのだそうだ。そして怪我などしている子はアピールしないらしい。ずっと組んでもらえない子とかいるんじゃないのか、と心配になる。朝練を見守る母気分。

見守る親方衆。

8時半くらいになると白いまわしをつけた幕内力士たちも登場してぐっと土俵周りの人口密度が高くなる。半裸の男たちがこんなにたくさん。風呂場か!

北の富士勝昭氏もダンディに登場するのですよ。生勝昭!
この稽古総見の一般公開は、あの八百長疑惑で相撲人気が落ちた年から始まっていて、年に1回、五月場所の前だけ一般公開されるらしい。それに来れたなんてラッキーだった。そしてつるちゃんは最初の年から毎年来ているらしい。なんという偉大な先輩。

照ノ富士、可愛い。

嘉風松鳳山

勝昭に挨拶後、談笑する白鵬

照ノ富士&高安
相撲に興味のない人から見たら、汚い絵面であろう。わかってる。

最近は買っていないが、かつてはよく「輝け!甲子園の星」という雑誌を購入していた。ある日、あの雑誌をもって飲み屋に行ったら飲み屋のお兄ちゃんがしげしげと眺めて半笑いで言ったものだ。「まめさん、僕、こんなに坊主頭の高校生ばっかり載ってる雑誌初めて見ましたよ」
…だろうね。

でも私の写真フォルダは昔から坊主頭でニキビ顔で泥だらけの高校生ばかりだった。今はそこにロン毛半裸、巨乳の男たちの尻が加わって更にすごいことになっている。ある意味ポルノだと言われれば否定はできない。




この日観客に一番人気だった、新十両の宇良。たくさんの先輩たちの胸を借りての激しい稽古の末にピグモンみたいな頭になって、それを先輩に結び直してもらっていた。…その姿を可愛いと思う人が少ないことなんてわかってる…。

この夏は仙台の友達が見たいっていうから一緒に仙台場所を見に行くことになったよ、と言ったらつるちゃんが満面の笑みで「まめ!順調にスー女の道を突き進んでるね!」と褒めてくれた。
…うん、順調に…奥の細道を突き進んでいるみたい、私…。
半裸の男たちで溢れる写真フォルダを眺めて、我ながら「ついにここまで来てしまったか」と恐れおののいている。

春のパンまつり

北斗の拳風に言うなら199X年、私たちはお気楽な田舎の学生で、友達の運転する軽自動車にぎゅうぎゅうに乗り込んでglobeなんかを大音量でかけながら農道を疾走し、夜中のすかいらーくガーデンズでお代わり自由のパンを何度も何度もおかわりして、「笑う犬の冒険みたいだ」と笑い転げていた。


「何食いたいー?」「パン!」「あー、パンねー」

すかいらーくガーデンズ、もうなくなってしまったな。ガーゼに包まれたクレームダンジュが大好きだった。
「パンの盛り合わせバスケットを何度でも持ってきてくれる!」ということにいたく感動して、嬉しくて楽しくて、いまだに「若き日の良き思い出」として心に残っている。

もう少し大人になって勤め始めてからは先輩や同僚とサンマルクに行ったものだ。あそこもパン食べ放題だった。

落ち着いたお洒落げな店内でレディースコースのディナーを頂いたのだが、やはり私はパンばかり食べていた印象がある。よもぎ味のパンがあって、みんなで「草餅みたいだね」と笑った。
暖かい色の電灯の下で、真っ赤なタートルネックのセーターを着た先輩が優雅にナイフとフォークを操っていた姿がいまだに目に焼き付いている。胸元のシルバーのアクセサリーも素敵だった。あれも良き思い出。

思い返せば、女子と女子のはざまで浮かれて楽しかった思い出の中で、私はいつもやたらとパンをもしゃもしゃ食べているような気がする。あるいはナン。
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ナン子・リー|ゆるキャラグランプリ オフィシャルウェブサイト キモい…

そんな訳で昨日、1ヶ月前から楽しみにしていた、okkoさん(id:okko326)、こみちさん(id:kazenokomichi)、くみちょうさん (id:Strawberry-parfait)、くみちょうさんのお友達Mちゃんとの会合でも、私は自分でも驚くほどのハイペースでパンを咀嚼していたのでした。

出てきたパンの6割は私が消費したと思う。ワインがおいしいと噂のお店なのに、私にとってはパン屋でした。。。
こみちさんの写真を生で見て、okkoさんの紺色のネイルを生で見て、くみちょうさんがおいしいものを食べて浮かれる姿を生で見て、Mちゃんと山の話がしてみたいと思いつつ切り出せず、ただただ私はパンをもしゃもしゃ食べていたのです。
おいしいパンでございました。おかわり自由って素晴らしい。

これから先の人生で、また女子と女子のはざまで浮かれながらパンを食べることが何度もあるだろう。
そしてそのたびにきっと思い出すのだ。これまで開催されたパンまつりの数々を。
楽しかった思い出は白いお皿のようにいつまでも残っていくのだ。

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山崎製パン | 知る・楽しむ | “白いお皿”ヒストリー

たくさんおしゃべりをした帰りの電車の中、一人にやにやと「今日のパンまつりを思い出す5年後」のことなんか想像していた。
ちなみに、女子会恒例のお土産交換会が盛大に開催され、今すぐご飯が炊きたくなるようなちりめんじゃこやら、ほっけの干物の絵の描かれた手ぬぐいなどを頂く中、私が持参したのはかずら亭さんの(id:kazurateiutubo)コーヒー屋さんで用意して頂いたコーヒー詰め合わせでございます。
かずら亭さん、ありがとうございました。

昨日、あれだけパンを食べたので、今日は米とパスタ。
次回のパンまつりを夢見ながら。

あたりまえ

この春のセンバツ高校野球の選手宣誓は小豆島高校の主将だった。
正直センバツの出場チーム選考には「大人のいやらしい思惑」が見え隠れしている気がしてしまうし、その上、宣誓文には更に「高校生らしく爽やかなキレイゴト感」を求める大人の視線を感じてしまう。
それでもやっぱり高校野球のいいところはいつもそういう大人の思惑を超える何かがあるところだ。


宣誓 今から92年前、第1回全国選抜中等学校野球大会が開催されました。その翌年に創部されたぼくの野球部は、来年の春、高校の統合に伴い、新しく生まれ変わります。当たり前にあった景色がなくなる。その重みをぼくたちは忘れたくありません。当たり前にある日常のありがたさを胸に、ぼくたちはグラウンドに立ちます。そして、支えて下さる方々を笑顔にできるよう、気迫を前面に出し、全身全霊でプレーすることを誓います。
http://www.asahi.com/koshien/articles/ASJ3N3QZCJ3NPLZU002.html

高校球児には珍しく普通の髪型。昨今では増えてきたけれど声を張り上げるのではなく普通のしゃべり方。
そして震災や世相など全方位を気にかける発言が多いここ最近の流れの中で、割と個人的な内容で来たな、と少し驚いた。

昨年末、たまたま安田菜津紀さんというフォトジャーナリストの方のお話を聞く機会があった。震災の話だとかシリア難民の話だとか。
私はまるで知らなかったけれど、シリアはあのオシャレ女子に大人気のアレッポの石鹸の産地で、ISが来る前は人々はごく普通に平和に暮らしていたらしい。
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これ。私も使ったことある。これで私もオシャレ女子!と浮かれながら。

ある日突然、「当たり前の生活」ができなくなってしまったから、お金に余裕のある人は海外逃亡の道を探す。それが難民なのだそうだ。
一時期「難民なのに携帯電話を持っている」とか「難民なのにいい服を着ている」とか「難民なのに生活レベルへの要求が多い」などと話題になっていたが、なんだ、そういうことだったのか、と驚いた。
当たり前の生活をしていたのだ。できるだけ「今まで通りの当たり前の生活」をしたいと願うのは当たり前のことだ。
もちろんだからと言って、全員を助けられるわけでも受け入れられるわけでもない。私の家に来たらどうか、なんてとても言えない。
「当たり前の生活」ができていた頃のシリアの写真を見せてもらったら胸に迫った。

君とまた、あの場所へ: シリア難民の明日

君とまた、あの場所へ: シリア難民の明日

自分だっていつ、突然に当たり前の生活ができなくなるかわからない。
事故や事件や、人生の落とし穴や、世界情勢の流れや、災害や運命の中で。
九州の人たちは今、当たり前の生活をなくして鳴り響く緊急地震速報に怯えているんだろう。
あの音にノイローゼになりそうだった5年前、空っぽになったスーパーの棚や、計画停電で恐ろしく真っ暗になった街に「当たり前の生活をなくした」とひどくショックを受けた。
当たり前を失った時、当たり前の存続が危ぶまれる時、当たり前のありがたさを知る。

今日、当たり前の生活が出来て良かった。
ベランダの桜に水をやりながら小豆島高校キャプテンの宣誓をずっと思い出していた。
早くみんな、誰も彼もが「当たり前の生活」を取り戻せるといい。

せきとり

今年は久々にオザケンのライブがあるのだけれど、見事にチケット申込みすべて外れた。前回のライブも全部はずれた。岡村靖幸のライブも全部はずれた。
そんな訳でチケット予約抽選なんて一生当たらないのではないかと思っていたけれど、めでたく大相撲五月場所初日の抽選は当たりました。やったー!やったー!チケット抽選にも当たりはあるのだ!しかも初日だよ!八角理事長の協会挨拶が聞けちゃうよ。
喜びのままに前回の初場所の写真でも貼っちゃう。

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正代×佐田の海。後ろの隠岐の海のグラビアアイドルみたいなポーズに目を奪われる。
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そんな隠岐の海と妙義龍。「妙技龍は体脂肪率22%よ!」と横から私の相撲師匠つるちゃんが囁く。22%!アスリートだな、妙義龍。

ちなみにこの日の戦利品、大相撲協会LINEフレンド限定のクリアファイルとつるちゃんおすすめの「TOKYO」と書かれたパンフレットと観戦記念証。パンフレットの背中は白鵬だろうと私でもわかったが、観戦記念証の背中は誰であろうかと尋ねると、「ああ、これは確か夏場所の玉鷲よ」と即答してくれたつるちゃん。…そう、見慣れると背中で誰だかわかるの…。それもいつの誰かまで…。いつか私にもそんな日は来るのであろうか。

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うっかり撮れちゃった豊ノ島面白ポーズの瞬間。豊ノ島の巨乳がいつも気になる。特に立ち合いの瞬間。
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でも後ろの碧山には負けるけどね。ホルスタインみたいだもの。
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体毛が濃くて相撲ファンには「サマーセーターを着てる」と揶揄される高安と琴勇輝。隣でつるちゃんが「高安ー!!高安ー!!」と何度も声をかける。相撲ファン仲間同士になると場内に響くこの掛け声のおかげで、テレビで見ていても「あ、今日つるちゃん国技館にいるんだな」とか「○○さん見に来てるんだな」とかわかるんだそうだ。恐ろしや、相撲ネットワーク。
この取り組みの最中、ずっと空席だった前の席にスッと座った着物のお姉さんがつるちゃんに負けぬ大声で「高安ー!高安ー!!!」と絶叫し、取り組みが終わるとまたスッと去っていった。なんという高安応援エリアなのだ、ここは。

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こちらは松鳳山。黒い体にガラの悪そうな顔つきなのだけれど、見ているうちにだんだんそこが魅力的に思えて好きになってくる。つるちゃん曰く「子供が生まれてから顔つきが少し優しくなった」との事。これでもか。
ちなみについ先日松鳳山が、下記のように呟いていた。

ご、ごめん、でも取り組みは撮ってもいいよね。掛け声かけなかったけど。。。

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初場所、久々に日本出身力士として優勝した琴奨菊のキクバウアー。琴奨菊×稀勢の里なんて取り組みを生で見れて良かった。
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テレビじゃ絶対カットされる弓取り式も見れて嬉しかった。
6時に終わって、つるちゃん、まるちゃんとビールを飲んで7時半に帰る。

この、国技館のある街は夜7時半にして既に、他の街の22時半のように閑散としている。
5月、またこの夜の早い街に関取を見に行く。今度は朝早くから。
なんたって席が取れたので!

普通の会社

以前に勤めていた会社は小さなワンマン経営の会社で、求人雑誌に有り体の表現をするなら「アットホームな職場」だった。社員数も少ないので大抵の人の名前は聞いたことがあったし、アットホームなだけあって「ご家庭か!」と言うようなおかしな事も多かった。
おじいさん社長が築地通いに夢中になった折には社長のために早朝出勤して会社の鍵を開ける当番制が導入されたし、失恋のたびにひと月ほど失踪するゲイ社員がいたり、長年会社で飼ってたわんこが死んで社葬になったり、社長用のカップラーメンを作るタイミングが悪かったと言っては役員が激怒されたり。
そんな話を聞くたびに「なんておかしな職場であろうか」と思っていたが、まあしょうがないかと諦めてもいた。
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築地通いしていた頃のおじいさん社長がしょっちゅう買ってきていた卵焼き。
ついに先日焼き立てを食べた!

今の会社に転職して早6年。
会社規模は以前と比較にならないほど大きく、その分鷹揚とした雰囲気がある。
「普通の会社にお勤め!」と浮かれていたが、最近「普通とは何か」としばし考えてしまう。
会社が大きい分、とにもかくにもいろんな人がいるのだ。

ベルマーク収集箱をゴミ箱に捨てるような心根の暗い人もいる。社員食堂の小鉢を窃盗してクビになった派遣の人もいる。トイレの洗浄ボタンを足で蹴り飛ばす者もいる。不倫、病的な潔癖症、刺青、エレベーター内にこっそりガムを貼り付けて回る…。
どこの誰がそんなことをしているのかはわからない。でも「同じ会社、同じフロアにこんなにも心根の暗い人がいる」と知った時には割とショックだった。
「普通の会社にお勤めのしっかりした方」「普通のOL」などという肩書の下にはこんなにも屈折があるものなのか。
うっかり東電OL殺人事件なんかを思い出してしまいそうになるではないか。

東電OL殺人事件 (新潮文庫)

東電OL殺人事件 (新潮文庫)

毎月の処分通達などにも「こんな人が同じ会社にいるのか」と衝撃を受ける。
やれ「免許証が減点続きで警察に来るように通達が出ていたが、長きに渡って放置したため免停、にも関わらず社用車を運転して更に違反を重ねて警察に捕まる」だとか、「泥酔して社員証をかけたまま電車の床に座り込んで大声で騒いだ」とか「会議費用として強制的にお金を徴収し飲み会を行った」だとか。

もう一度書くけど、とにもかくにもいろんな人がいるものだ。
それくらい理解していたつもりだけれど、同じ会社で一応同じ目的を持って働く人の中にこんなにもいろんな人がいるとは思っていなかった。不覚。
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こちら、いろんな貝@築地

そんな風にいろんな人のいる普通の会社では労災認定されるケガもいろいろある。
安全衛生委員会なる委員会の会議議事録が全社ポータルにアップされるのだが、それによると
「通勤途中に急いでいたため一時停止中の車と車の間をすりぬけて横断しようとし、バイクと接触。複雑骨折」
…自己責任ではないか、と思ってしまうが労災認定だ。安全衛生委員会は冷徹に「朝は余裕をもって通勤して頂きたい」とコメントしている。当たり前だ。
また「通勤途中に正面から来た人を避けようと道路の端に寄ったところ、店舗のひさしに頭をぶつけ救急搬送」というのもある。申し訳ないが想像したらなんのコントだ、と笑ってしまう。が、安全衛生委員会はここでも冷徹だ。「急いでいたことが原因。余裕をもった行動を」

私と同僚の笑いが止まらなくなったのは12月の労災事故。
複合機(97kg)を2人で持ち上げた際に腰をひねり、急性腰椎症」
(97kg)という注意書きの時点で危険なものを感じていたが、安全衛生委員会の「元々腰が弱い所に中腰から持ち上げたことによる」というコメントの冷徹さに耐えられなくなり、涙を流して笑った。
…ひどい。この書かれ方はひどい…。
いったいこの委員会はどんな風に開催されるのだろう。誰かが淡々と事案を読み上げ、冷静に話し合うのだろうか。誰も私たちのように笑い転げたりしないのだろうか。

あまりの面白さに、ヒマにまかせて過去の分の議事録も読み漁ったが、そうしてわかったことは「この議事録は去年の7月から突然、面白味が格段に増している」という事だ。特に書記は変更されていない。では書記にいったい何があって、突如このような躍動感あふれる議事録を作成できるまでになったのであろうか。

…いかに想像しようとしても、もはや私の想像力では及ばないような気がする。
だって、普通の会社には普通の仮面をかぶった、本当にいろんな人たちがいるから。