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90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

死亡フラグ

※この物語はフィクションです。



うららかに春の陽射しがふりそそぐ住宅街の片隅に、カフェ併設のパン屋さんが可愛らしく佇んでいる。
店内は家族連れや恋人たちで溢れ、彼らは皆幸せそうな微笑みを浮かべ、穏やかな週末を楽しんでいるようだ。

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黒板に書かれた「当店一番人気」というクリームパンの看板を見ながら「ねえねえ、一番人気だってー。食べてみようよ。お願い!今日は私のお誕生日なんだよ?」と可愛らしく恋人におねだりする彼女。
「明日は一年ぶりに娘が帰ってくるんだよ。あの娘はここのパンが大好きでね」と穏やかに笑う初老の男性。
「いつか絶対に二人でこういうお店を持とうね!」と約束しあう若い夫婦たち。
そんな典型的な幸せを背に、クリームパンを買って店を出た私は、青空を見上げて、その眩しさに少し目を細めた。
こんな風に空を見上げるのはいつ以来だろうか。
急に強くなった春風が桜の花びらを舞い上げて通り過ぎる。
「少し風が強くなってきたな。帰ったら屋根の様子を見に行かなければ」私はそう独りごちて歩き出した。

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COPPET(横浜市青葉区青葉台)クリームパン 150円
パン:粉か酵母の匂いがする。
クリーム:香料がものすごく強い。
☆☆

香料の強さとパンの粉の匂いが口腔内に充満して胸が苦しい。
けれど、どうしても伝えなければならないことがあった。涙で視界が霞む中、私は最後の力を振り絞って必死で言った。

・・・最初から知っていたさ。一番人気と呼ばれたお前が、本当はイマイチなクリームパンだなんてこと。
けどな、それでもクリームパンを食べるって、決めたんだ・・・。
・・・大丈夫、心配するな。ちょっと休めば・・・すぐ・・・元気に・・・なる・・・か・・・ら・・・。


参照:ベタな死亡フラグの法則 - chakuwiki


「一番人気」は死亡フラグだってこと、もう私知ってるんだからね。