90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

向日葵と月見草

オギノパン。
http://www.ogino-pan.com/

神奈川県内で割りと有名なパン屋で、給食用のパンを製造したりしている。ここのウリは「丹沢あんぱん」と、直売店で販売している、揚げたてのあげぱん。丹沢あんぱんは、大福のように小さくて、ずっしりとしていて、お値段は130円。
まるで木村屋みたいに、小倉以外にもかぼちゃや柚子、抹茶、栗、などいろいろな味のあんぱんがあり、小田急沿線では駅のコンビニにも各種取り揃えてある。ただしそれはあんぱんだけだ。「丹沢あんぱん」という小さなのぼりや暖簾を自慢気に立てて、いつもあんぱんのみが置いてあった。
だから、オギノパンはあんぱん屋なのだと思っていた。

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オギノパン(神奈川県相模原市緑区) 牧場のジャージークリームパン 150円
パン:メロンパンみたいな感じ。
クリーム:ミルク味が濃くておいしい
☆☆☆☆☆

しかし先日、横浜駅相鉄改札内に常設になったオギノパン店舗前を、どうせあんぱんでしょ、と通りすぎようとしたら、クリームパンがあるのを見つけた。がっちりとした無骨なグローブみたいな形で、洗練されているとはとても言えない風体。そして店舗前に積み上げられたバットの中に無造作に並べられている。
ところが、これが感動するほど美味しかった。味の濃い正統派のクリームパンだった。
こんなに美味しいのに、何故このクリームパンはその存在に注目してもらえないのだろう。いつだって、スターの影に隠れた地味な存在であるのがクリームパンの宿命と言えば宿命であるが、「丹沢あんぱん」と書かれた大きな暖簾の奥に、あんぱんは重々しく鎮座し、クリームパンは前座のように店の軒先に置かれている。
あんぱんが王・長島のように太陽の下で咲く向日葵なら、クリームパンは野村、稲尾のような月見草。
あんぱんがテレビ中継豊富なセ・リーグなら、クリームパンは馬鹿にされ続けたかつてのパ・リーグ

いいんだ、世間はあんぱん様に好きなだけ熱狂すればいいんだ。私はクリームパン派で、パリーグ派だもの。
あんぱん様は好きなだけ「丹沢あんぱん」を名乗ればいいんだ。太宰治は言ってたもの、「富士には月見草がよく似合う」って・・・。

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