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90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

一日の過ごし方

クリームパン

学生時代の友人にアケミというお嬢様がいた。
広尾の立派なマンションに住んでいて、週に何回かお手伝いさんが来る。夏休みに旅行に行くと言えば、お母さんが「アケミさん、帰りの方角が悪いから、アメリカに寄ってから帰ってくれば?」と言い出すし、家にかかってくる間違い電話の内容でさえ「奥田民生さんの家ですよね」というセレブぶり。
当のアケミは何故だかそんなセレブ家庭に引け目を抱いているようで、顔も可愛くて頭もいいのに、いつもくよくよと後ろ向きだった。
まるで、当時流行っていたビバリーヒルズ高校白書の「ケリー」みたいな子だった。

「○○しなければならない」という思い込みが可哀想なくらいに強くて、まだ大学生なのに「条件のいい男の人と結婚しなければならない」と思っていたし「休日に一度も外に出ない自分はダメな人間だ」と思い込んでいた。
え!!何がダメなの?別にいいじゃない!・・・と、私は言ったのだけれど、アケミは悲しそうな顔で「ダメなんだよ、何も予定がないなんて。一日をだらだらと消費するだけなんてダメなんだよ」と呟いた。

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BAUMDORF(横浜市青葉区すすき野) クリームパン 130円
パン:小気味良くさくさく
クリーム:少し香料が強いプリン味クリーム
☆☆☆

今になって、時々あの時のアケミの「休日に一度も外に出ないなんてダメなんだよ」という悲しげな呟きを思い出す。
それはもちろん、休日をだらだらと家で、しかもパジャマのままで過ごしてしまう時。ああ、ダメだなあ、勿体ないなあ、と思いながらもだらだらしちゃう。
でも、そんな風に思うのは年を取ったからだ。だから「遊べるうちに遊んでおこう」なんて変な焦りや欲が出るのだ。
あの子は生き急いでいたのかしら。いつもおかしな男の人とばかり付き合って、勘当されたり、妊娠したのしないのと騒いだり、30万包んで占い師に助けを求めに行ったり、麻雀なんかにハマッてみたり、波乱万丈な生活をしていた。

アケミは今頃どうしているだろうか、いい人と結婚できただろうか、と思いながら、休日の夕方、「ちょっとくらい外にでるか」と重い腰をあげてクリームパンを買いに行った。
さくさくしたクリームパンを食べながら、「でもやっぱり、だらだら過ごす休日もアリなんじゃないのかなあ」と考えた。

ビバリーヒルズ高校白書 シーズン1<トク選BOX> [DVD]

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