米の宅急便
年末に向けて仕事がバタバタし始めた。忙しさのピークはクリスマスイブだ。
バタバタの高揚感の中で主任は鬼長官のように言う。
「お前ら!クリスマスなんかあると思うなよ!君たちの前にあるのは書類の山だけだ!」
主任は行事を大事にする人で、既にサンタクロースの格好をして走るマラソン大会にも出走したし、節分の時などは「鬼の衣装ってどこに売ってると思う?ドンキにあるかなあ」と2週間ほど前からウキウキそわそわしていた。初めは冗談かと思ったが、だんだん本気であることに気づいた。彼は言う。
「みんな、クリスマスばっかり重視するけどさあ、日本人なら節分でしょ!もっと節分を大事にしろよ!」
・・・あの人ほど、節分を愛している人を、私は他に知らない。
そんな主任は、つい先日は米俵を担いで都内を疾走したそうだ。
「何それ、何の罰ゲーム?」と聞いたら、お友達のお見舞いだったらしい。「お見舞い」にかけて「近江米」を担いで行ったんだって。尚、中身は10kg。どうしてそんなすごいこと思いつくの?
でも、いいな。米俵なんて実際に見たことないもんな。米俵担いで来てくれるなんてまるでかさ地蔵みたいだ。
正直、サンタクロースは来なくていいから、かさ地蔵にお米を担いで来て欲しい。おもちゃなんていらない、米よ、米!
大人になってから、師走が近づくと毎年うっとりと妄想をしている。
「大晦日にお地蔵さんズが遠くから、じょいやさー、じょいやさーって来たらいいよねえ。そんなのサンタクロースの鈴の音以上にときめくよねえ。鼻血吹くぐらい興奮する・・・。でも、お地蔵さんたち、うちのマンションの階段登れるかしら。階段が壊れるか、地蔵が壊れるかの一騎打ちなんじゃないかしら・・・」
余計な心配までしつつ、なまはげのように「どこかに笠のない地蔵はいねがあ!!」と目を血走らせて街を徘徊するも、世の地蔵という地蔵は大概近所のばあちゃんによって手編みの頭巾もちゃんちゃんこも装備されているもので、全くもって隙がない。おのれ、ばあちゃん達め。
今年もあれこれ策を巡らせ、半ば諦めてため息をついていた所、知人から長野の農家の立派なラ・フランスが届いた。まあ!ひと足早いかさ地蔵のようだわ!とトキめいた。
クリスマスにはサンタクロースになってこのラ・フランスを周りの人に配るつもりだ。なんならお地蔵さんに一つお供えしてもいい。そうしたら、大晦日にお米担いで「じょいやさー、じょいやさー」って来てくれぬものか。
妄想したりもするけれど、私は元気です。
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