注文の多い料理店
あのサンドイッチ屋に入った事がない方もいらっしゃるかもしれませんが、とにもかくにも面倒くさい店なのだ。
メニューの中から「コレ」と選んで注文するも、やれパンはどれにするだの、ドレッシングはどうするか、増量したい野菜や抜きたい野菜はあるか、マスタードを入れる入れない、焼く焼かない、アレがおすすめ、これがおすすめ・・・。
うっかり入ると、毎回途中で嫌になって、帰りたくなってしまう。
「メニューの通りに作ればいい!」「お前の好きにすればいい・・・」
胸中に渦巻くのはそんな投げやりな言葉ばかり。でも口に出せない。
それでもこの店が大好きな人もいる。なにせコンセプトは「世界にたったひとつのサンドイッチ」だ。
「私のために作ってくれた、私好みの、私だけのサンドイッチ」と喜ぶ人もいるのだろう。
友人の中には、リア充っぽく「私はいつもパンはウィートでオリーブ多めにしてもらってるけどぉ」などと言う者もいるが、そんなのサンドウィッチだからお洒落げに聞こえるだけだろ、ラーメン二郎で「脂増し野菜増し辛め増し」って注文するのと何も変わんないだろ。
・・・と言うほど、やさぐれてしまう私ですが、もう何年も「私だけの七味唐辛子」を作ってほしいと思い悩んでいる。
まあ、浅草に行けばいいんですけどね。さすればやげん掘や鏡商店が私のための七味唐辛子を作ってくれましょう。
しかし、浅草に行きたしと思えども浅草はそれなりに遠し。
麻の実が好きなのだ。うっかり二粒出ちゃったら一粒、瓶に戻して大切に食べるほど好きだ。
だから麻の実の多い七味が欲しい。青のりは少な目がいい。陳皮は多目。
一度は乾物屋で麻の実を購入し、自分で煎って足してみた。でも何か違った。
スーパーで手に入るだけのいろんな七味を試してみたけれど、結局のところ、まあ、S&Bが無難で安くていいか、麻の実も入っているしね。
・・・そう思っていたのに、先日七味が切れた際、うっかりとあの善光寺唐辛子を買ってしまった。
ついつい「やっぱ七味はこの缶がいいよね」とか「いつもよりちょっといい七味にしちゃおうか」なんて調子にのってしまったのだ。私のバカバカ!
あの八幡屋礒五郎の七味には麻の実の粒が入っていないのよ!!そういう経緯も経てS&Bに落ち着いたはずだったのに・・・。
ああ、ダメだ、ダメだ、この七味じゃダメなんだ・・・。使うけど。
今年はもう、労を厭わず浅草に行こう。そしてセミオーダーしてこよう。きっとあれこれ聞かれても途中で帰りたくなったりはしないだろう、七味なら。
「お前の好きにすればいい・・・」と虚ろな目で呟きたくなったりもしないだろう。これだけ何年も希求していたんだもの。
あのサンドウィッチ屋に行く人も、そんな情熱を胸に、あの店に出かけているんだろうか。
- 作者: 宮沢賢治
- 出版社/メーカー: 角川書店
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