乙女の祈り
三軒茶屋からぶらぶらしていたら、住宅街の中に突然パン屋さんがあった。まだ開店したばかりらしい。
女の子が「将来はパン屋さんになりたいなあ」って言ったら、きっとこういうパン屋さんを夢見ているんだろうな、という可愛らしい佇まいで、小さなお店に入ると、西洋の看護婦さんみたいな制服に身を包んだ女子達が、小鳥のようにぎっしりとレジに並んで「いらっしゃいませ」と微笑んでくれる。
窓際には座ってパンを食べれるようにテーブルが2卓ある。
それは、ホームセンターで買ってきたベニヤ板を直線的に裁断して釘を打っただけの、塗装さえも施されていない机と椅子なのであるが、この乙女の園では、そんな「お父さんの日曜大工的作品」でさえ「ナチュラルな感じ~」「木の温もりが~」などと言われて当然という風体である。
petersen(世田谷区若林) クリームパン 126円
パン:甘みがあって表面がカリッとしてておいしい。
クリーム:ぎっしり入ってるけど味が薄くてイマイチ
☆☆
芥川龍之介が侏儒の言葉に書いていた。
「少女。――どこまで行っても清冽(せいれつ)な浅瀬。」
儚い夢に胸を膨らませた乙女のようなクリームパン。
- 作者: 芥川竜之介
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/02/14
- メディア: 文庫
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