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90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

前略、厠の中より

中高生の頃の友人ゴトオの家のトイレには毎年相田みつをカレンダーがかけられていて、遊びに行ってトイレを借りるたびに、いつも含蓄のあるような、ないような言葉を投げかけられた。
それで毎回、深いため息をつきながらトイレを出て、「みつをが、つまづいたっていいじゃない、だって」「お金があった方が便利だから便利の方がいいって言ってる。みつを、正直だな」と報告すると、ゴトオに「お前ほど、みつをカレンダーを熟読してる奴はいない、うちの家族はみんな見てるようで見ていない」と呆れられた。

…ちょっと待って!あんなにも、便座に腰かけたらそれしか目に入らないという位置に貼ってあるにもかかわらず、誰も見てないってどういうこと!

とにもかくにも、14歳から20歳まで足繁くゴトオ家に通ったおかげで私は結構みつをの言葉を知っているし、どこでみつをの言葉を見かけようとも、どんなにみつをがいいことを言おうとも、それは必ずゴトオ家のトイレにあるものとして思い出される。

うちの実家のトイレには、母が何処かの古道具屋さんで買ってきたちょっと素敵な額縁に雑誌の表紙の絵を入れたものと、ユニセフか日本国際ボランティアセンターの美しい写真のカレンダーがかけられていたが、私が家を出てから知らないうちに額縁はリビングに移動して、代わりに日めくりカレンダーがかけられるようになった。
前門のユニセフ、後門の日めくり。そんなにも日付が気になるか?
その日めくりも、ことわざ日めくり、英語日めくり、猫めくりという変遷を経て、ここ数年は「名言・格言日めくり」に落ち着いている。

昨夜、実家に行って、おままごとみたいな小さなお茶碗で母と中国茶を飲んでいたら、あの人が突然顔を輝かせて、「あ、ちょっと!トイレ見てきて!トイレのカレンダー!今日笑っちゃったのよ。すっごくいい言葉が書いてあったの!」と言い出す。
それでふむふむと見に行ったら、名言格言日めくりカレンダーは重々しく告げていた。

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「何のまじないだ」
散らかった部屋を見た祖父の一言です。

まあ!なんと素敵なお祖父様。なんと素敵な表情のにゃんこ氏。
悪魔召喚の儀でも始まるかのような散らかり具合だったのだろうな。それは猫も唸りを上げる程の。

母はげらげら笑いながら「あたし、これから部屋を散らかした時はこうやって言うことにするわ。そしたら片付ける気になれると思うの」と誓いを口にした。
・・・本当でしょうね・・・。でも、私もそう言う事にするわ。会社の主任の机の散らかり具合が正に悪魔召喚の儀みたいだから、早速明日言ってみるわ。
厠から発信された素敵なメッセージを。