90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

本当の自分

青いタイトルで恐縮ですが。

5月に弟の結婚式があった。最近の結婚式というのは親族なんて添え物で、主役は新郎新婦及び職場の皆さんと大学時代のお友達だ。それで、親族や古くからの友人は隅に寄せ集められて、わーわー盛り上がるご友人方を横目に見ていた訳ですが。
式の初めから、どうも何かがおかしいと思っていた。今日、あの壇上にいるのは、本当にうちの弟か、あれは替え玉ではないのかと。
お友達やら社長さんやらのスピーチによると、我が弟は非常に企画力統率力があり、誰かが困っていれば、いつでも手を差し伸べてくれるヒーローだと言うのだ。

・・・。確かにあの子は昔から見栄っ張りのええかっこしいだ。外面はものすごい好青年で「あ、いいよ、いいよ、俺がやっとくからさ」なんてニコニコしておいて、そのしわ寄せは全て我々家族の方に来るのだ。「俺がやっとくよ」って言ったくせして、電話を切った途端に「あーあ!みんな俺に押し付けるんだからよ!!」と悪態を付き、部屋のドアをバシン!と閉めたり。「ホント、今日はありがとね、じゃあね!」といい人っぽい笑顔を浮かべて友達と別れた瞬間、冷蔵庫を開けて「あー疲れた、腹減った!なんだよ、この家は食うモン何もねえのかよ!」と忌々しげに冷蔵庫の扉を叩きつけたり。

そんな訳で結婚式で弟讃美コメントが出る度に「は?」「え?」「これってうちの子のことなの?」と仰天する我々親族を、弟の幼馴染たちが「いやいや、お姉さん、お母さん、お兄さん、お父さん、ここはこらえて下さい!」「おめでたい席だから!」「気持ちはわかるけど!」と必死でなだめてくれた。
あの子たちがいてくれなかったら、もう、「いくらおめでたい席のお世辞やお愛想が入ってるにしても、盛り過ぎだろう」「なりすましか!」と大騒ぎになる所だったわ、全く。

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それで密かに「この結婚は大丈夫か」「嫁は騙されているのではないか」と心配になったりもしたけれど、弟にしてみれば周りからのあの賛辞は、必死にセルフプロデュースしてやっと勝ち得た評価なのだろう。「こういう俺でありたい、これが本当の俺、俺が俺らしくあるために」とあの子は思ってきたんだろう。

バカだね。
アンタなんか、意地っ張りで頑固で見栄っ張りで、勝つと分かってる勝負しかできなくて、臆病で小心者だから計画を綿密にたててるだけで、計画通りにいかないとパニックや癇癪を起こすし、最近じゃグルメみたいな口聞くけど本当は好き嫌いが多すぎて、子供の頃なんか栄養失調になりかけた事もあった子じゃない。自己中心的で言葉は辛辣、美的センスはそこそこ、マメで凝り性で俗物で形式に囚われがち、どこかしらナイーヴで不器用。
そうして、なんだかんだで可愛い、いい子。

いいこと?いかに自己を飾り立てて「理想の俺」なんて追い求めたり「本当の俺」なんて青臭く言おうとも、アンタは結局、上に書いた通りの子でしかないのよ。
そして、書きだしてみたら、姉弟だけあって、私も割とそんなタイプ。