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90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

火葬

泡沫

環境問題が騒がれだしてゴミの分別がうるさくなった頃は埼玉に住んでいた。市町村が張り切って決めたゴミの分別の仕方は実に細かく、例えばおかめ納豆の蓋のビニールはビニールゴミ、たれパックはプラスチックゴミ、紙容器は可燃ごみ、と言った具合で、覚えきれない父に「もう!納豆の蓋はプラゴミじゃなくてビニールって何度言ったらわかるの!」などと憤慨していた。
その後、家族で横浜市に引っ越してきたら、分類は似ていても、内訳はそこまで細かくなかった。なんでも横浜市は大抵のものは燃やせる火力の強い焼却炉を持っていて、なおかつ交通量が多く、数多くのゴミ収集車を走らせることができない為に分別が大まかであるとの事であった。

実際、初めて一人暮らしをした横浜市金沢区では大家さんに「どうせ一人暮らしなんて大した量のゴミは出ないんだから全部燃えるゴミでいいわよ!」と朗らかに言われて唖然としたものだ。

あの初めての一人暮らしから早17年。
最初に買った家電のうちで今も現役なのは洗濯機と掃除機だけだ。2年ほど前に冷蔵庫とアイロンも買い換えた。
冷蔵庫は家電リサイクルに出すからいいが、アイロン、これはどうするべきか。粗大ごみか。しばし悩んだ挙句、横浜市資源循環局で調べてみたら、なんとアイロンは「燃やすゴミ」であった。え、燃えるの、これ・・・。すごいな横浜市。なにせ表記も「燃えるゴミ」とか「可燃ごみ」じゃないのだ。「燃やすゴミ」だ。燃やしてやる!という意欲が感じられる。
そうか、アイロンは燃えるのか・・・。さようなら、祖母が買ってくれたアイロン。火葬場に送り出すような気持ちでゴミに出した。

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これは横浜市資源循環局のキャラクター。可愛い顔して何でも燃やすスゴい奴。
ウェストが細いのは、ゴミ30%減量を表しているとのこと。ほほう。

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例の、蓋が開いてしまう為に紐でくくって使用している炊飯器、その窮状を見かねて、母が実家の炊飯器をくれた。丁度実家で炊飯器を買い換えたところだったらしい。となると、あの蓋のしまりの悪い炊飯器は当然ゴミに出さなければならない。

かつて、アイロンを燃やすという横浜市の強い意欲に衝撃を受けた私ゆえ、ある程度予測はしていた。きっと炊飯器も燃やすつもりだろう、と。
それでまた横浜市資源循環局のサイトを見てみると、「ミーオとイーオの分別辞典Mictionary」という素晴らしいコンテンツが出来ており、検索欄に捨てたい物の名を入れるとどうすればいいかを指示してくれる。早速「炊飯器」と打ち込んだ所、Mictionaryは即座に断言した。

炊飯器の内釜:小さな金属類 炭製の物は燃えないごみへ
炊飯器(プラスチック製):燃やすごみ 50㎝以上のものは粗大ごみへ

やっぱりね、そうだろね。燃やすのね。知ってたわ。
月曜日、10年慣れ親しんだ釜にさよならだ。燃やす意志満々の横浜市の焼却炉がきちんと荼毘に伏してくれるだろう。
まだ使えることは使えるけれど、つながっていたコンセントを抜いたら急に、なんだかふっと息を引き取ったかのように見えてしまった。すぐに口を開けて腹の中を見せてしまうほど開放的だった炊飯器よ、生前は大変お世話になりました。今まで本当にどうもありがとう。