90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

もしもピアノが弾けたなら

思いのすべてを歌にして きみに伝えることだろう。

DREAM PRICE 1000 西田敏行 もしもピアノが弾けたなら

DREAM PRICE 1000 西田敏行 もしもピアノが弾けたなら

もしも演技ができたなら。
現実をやすやすと飛び越える翼を持っていたなら。

ご存知の方も多いと思いますが、私は大概妄想好きだ。一部で「妄想のプロ」と呼んでもらえるくらいに。プロには程遠いと自戒しておりますがね。

だから頭の中でなら何度でもお姫様になったこともあるし、悲劇のヒロインになったこともある。勇者になったこともある。けれどそれを形にして演じたいと思ったことは一度もない。
かつては劇団に勤めていたけれど、勤める前までお金を払って舞台を見るなんて考えたこともなかった。
だから勤め始めてからも、いつも扉一つはさんだ向こうが戦時中やヨーロッパや異世界になっていることが不思議でしょうがなかった。重く流れる「海ゆかば」や玉音放送を聴きながらのり弁を食べる昼休み、「なんというシュールな瞬間か!」と毎日驚いていたし、俳優さんが島津斉彬役にキャスティングなんてされると「島津斉彬!!あの人、歴史上の人物になっちゃったの?」と逐一驚いた。
頭の中以外で、現実世界に於いて、現実と非現実の垣根を飛び越えるのがヘタクソなのだ。些細な事ばかりが気にかかる性分でもあり。

おかげで「俳優になりたい」と思う人の動機がまるで想像つかない私。
ところが、劇団時代のおかま先輩が「震災を機に決意したの。ワタクシ、俳優になります!」などと言い出すではないか。それだけでも驚いたが事務所のプロフィールページの気持ち悪い笑顔にも、年齢が10歳以上もサバ読まれてるのにも驚いた。アンタ、いつの間に私より若く!!

更に驚いたのは「見に来てー」と呼ばれた舞台「ロミオとジュリエット」にて、彼がロミオの父になっていたことだ。父!あなたが!!それもモンタギュー!!!
驚く私に彼は真顔で言う。
「ホントはさあ、もちろんロミオ狙ってたワケよぉ。でも父の方にされちゃって。まあ、しょうがないわよね、だってロミオ、ティーンネイジャーじゃない?」
・・・本気でロミオ演じるつもりだったの!?
「当り前よ!アンタ、俳優ってのはなんにでもなれるモンよ!ティーンエイジャーやる気満々だったわよ!!」
・・・俳優、なんと恐るべし。

当日、舞台の上でロミオは恋の翼を借りて高い塀を飛び越えていたが、私と友人はどうも芝居の世界へと飛んでゆく翼を持たなかったようで、舞台上のおかま先輩を「モンタギュー」として見ることが出来ずに「あの人、本気で父親役なのね」「噛み噛みじゃない?」「衣装の光り物、すごいわね、あれ、どこで買ったのかしら」とそんなことばかり気になっていた。そして西日に照らされて帰る道々、二人で「俳優って一体なんなんだろうね」とボソボソ話した。

さて、これは2ちゃんの西田敏行コピペ。

1584 西田敏行西田敏行に小牧長久手の戦いで敗れる。
1598 西田敏行死去。遺児は後に西田敏行に滅ぼされる
1600 西田敏行真田昌幸に進軍を阻まれ西田敏行の叱責を受ける
同年 西田敏行、上記にも関らす石田三成関ヶ原に破る
1603 西田敏行、幕府を開き初代将軍になる
1605 西田敏行西田敏行に将軍職を譲り、後に駿府城に移る。
1614 西田敏行西田敏行を「関ヶ原には遅すぎ、大坂には早すぎる!たわけうつけ間抜けーッ!」と怒鳴り付ける。
1716 西田敏行、八代将軍になる

西田敏行ときたら、豊臣秀吉だの徳川家康だのありとあらゆる歴史上の人物になっているので彼にまかせておくと年表もこんなことになる。平賀源内になっているのを見たこともある。
彼の奥さんはどんな気持ちなんだろう、不思議じゃないんだろうか、自分の旦那が豊臣秀吉だの徳川家康だのって。
・・・それともあえてそういう所は見ないようにするんだろうか。「うちにいる時はただのお父さんだから」みたいな感じだろうか。

・・・そんな妄想は大得意でも、俳優たちのように軽々と現実とファンタジーを行き来する翼はない。
もしもそんな翼があったなら、あのおかま先輩がきちんとロミオの父に見えただろうか。
・・・いや、それはまた別の問題かしら・・・。