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90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

優しくされると

クリームパン

世の中が援助交際全盛期だった頃、私たちの世代は就職活動まっただ中であった。
そんな折、どこからどう見ても40代にしか見えない老け顔の同級生ヤマダと「タイタニックでも見るか」と渋谷ハチ公前で待ち合わせた。22歳、童顔、私服の私はきっと中高生にしか見えず、就職活動用にスーツとトレンチコートのヤマダは援助交際をしそうなおっさんに見えたのだろう。
見知らぬおじさんが、そっと私の肩を叩いて悲しげに首を振って言った。
「そういうことは辞めなさい」
ちちちちちがうんです、これは援交とかじゃないんです、そもそもコイツはおっさんじゃないんです!おっさんに見えるけど!

今でもヤマダと会う度にあの時の話をする。そうしてゲラゲラ笑いながら「それにしてもあのおじさんは本当にいい人だったよね。なかなかできることじゃないよね、ものすごく優しい人だったよね」としみじみとする。

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神戸屋レザンジュ たまプラーザテラス店 クリームパン 150円
パン:給食みたいな。もうちょっとふわふわでもいいかも。
クリーム:おいしい!
☆☆☆☆

このクリームパンは、私がハズレクリームパンばかり食べて、世の中には美味しくないクリームパンの方が多いのだな、とクリームパン恐怖症になっていた時に食べたパンだ。
ものすごく美味しいわけではないけど、普通に美味しかった。その事が本当に嬉しくて、夕暮れ空の下、涙が出そうになったものだ。

一人でいる時にはそれなりに気を張っているのか、例えば地震が来ても、怖い夢を見ても「落ち着いて!大丈夫、私、頑張れる!」とやりすごしている。
電車で痴漢に遭った時だって「はっはっは、このバカめ。若い女だとでも思ったか。こんな事でビビるとでも思ったか!」と強気に肘鉄くらい食らわせる。
でも、たまたま近くにいたおじさんが「何やってんだ!やめなさい!」なんて守ってくれたら、途端にぐずぐずぐずと膝から崩れ落ちそうになる。別に全然怖くなんてなかったのに「こここ、怖かった…怖かった!!」と泣いてしまいそうになる。

だからそんなに優しくしないでよ。
ハズレクリームパンばかりの中で「所詮こんなもんよね、もう私も色んなクリームパン見てきて知ってるからさ」と世慣れて斜に構えた女みたいに強がって見せていたのに、いきなり「バカだな、俺がいるだろ」みたいに普通のクリームパン出されたら泣いちゃうじゃない。泣いちゃうでしょ!

優しくされると泣きたくなる・・・そんな歌があったな、と思ったら古内東子だった。そして正しい歌詞は「優しくされると切なくなる 冷たくされると泣きたくなる」だった。
そう・・・。それは、守ってくれる相手がいる人だけが言えることね。
守られていない者は、優しくされると泣きたくなるのよ。冷たくされたら強がれるのよ。