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90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

この手をすり抜ける

泡沫

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今シーズンからロッテに移籍してしまう元西武ライオンズの涌井くんのお母さんが、野球雑誌のインタビューで言っていた。
「あっという間に親元を離れてしまった。もう少し手をかけたかった。横浜高校時代、久々の帰省の後で寮に帰る日に駅まで車で送った。振り向きもしないで階段を登って行ってしまう後ろ姿に、学校が楽しいんだな、と安心しつつも、親としては少し寂しかった」

ああ、男の子だなあ。
横浜高校の学ランを着て、ちょっと不機嫌そうな顔をして駅の階段を登って行く涌井くんの背中が私にも見えるようだった。
子供の頃から合宿や遠征も多かっただろうし、野球留学(この言葉、好きじゃないけれど)で一度親元を離れてしまえば、大学進学にしろ就職にしろ、プロになるにしろ、もう親の出る幕ではなくなってしまう。
親御さんにとっては本当にあっという間に自分の手を離れてしまった、という感覚だろうなあ、としみじみ思う。

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さて、先日ミニ盆栽の長寿梅を手に入れた。鉢を入れても全長10センチくらいの可愛らしい子だ。
長寿梅は盆栽の中でも非常に育てやすい品種で、毎日水をあげればいいだけらしい。週に一度液肥をやる。
初めての盆栽にウキウキしている私には「あら〜、それだけでいいの?」と、ちょっと物足りない。もう少しあれやこれやと世話を焼いてみたいのだ。それが続くかどうかはともかくとして。

おまけに盆栽というのは外で育てるものであり、家の中にずっと置いてはいけない、と言う。
長寿梅は寒さに強く、寒い季節にはきちんと寒さの中に置かないと、春になっても花が咲かなかったり、咲いてもすぐ散ってしまうのだそうだ。また、外で日光に当てて育てないと弱い木になってしまうらしい。
…そうなの。手元で愛でながら育てる訳には行かないのね。鑑賞するには自らも寒さに耐えねばならないのね。

同じことを思う人が多いのか盆栽サイトやYahoo!知恵袋には「室内で育てたいのですが」という質問が多く並んでいる。そして解答者は厳しく答えている。
「盆栽は外で育てるものです」
…まるで昭和の子育て指南みたいだ。「子供を甘やかしすぎてはいけない」「外で遊ばせなさい」「冬は寒くて当たり前」なんて、おじいさんやおばあさんが言うような。

でも考えてみれば「育てる」ってそういうものか。
甘やかさないことが本人にとって一番いいのか。いかに子離れするかが一番大切なことなのか。あれこれ手をかけたくなるのは育てる側の自己満足や趣味であって、決して「育つもののため」ではないのだな。
…盆栽、奥が深いぜ。

人に仕立ててもらった鉢を買ってきたのだから、もう枝ぶりも何も私が手をかける隙もない。後は見守るだけ。
手のかからない子でありがたいけれど、もう少し甘えてくれてもいいのに…。
と、少し寂しく思っている。

Slipping Through My Fingers

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