両手いっぱいの夢

久々にクリームパンについて書く。

こないだの満月の夜、友達と夜遅くまでお茶をして23時頃の電車に乗ろうとしたら、改札前に若い男の子が立ち尽くしていた。よく見ずに脇を通り過ぎたら、友人が「ねえ、あのお兄ちゃんさあ、両手にソフトクリーム持ってたの」と困惑して振り返りながら言う。
「それで、両手が塞がってるから改札を通れないのよ」
ええ？それ、誰か友達の分でしょう？きっと友達が来るのを待ってるんだよ。
「違うよ！一人だもん。だから、一生懸命片方をぱくぱく食べてなくそうとしてたの！なんで？なんで2個買うの？」
･･･な、なんでって･･･なんだろ、バニラとマンゴーとか、違う味なんじゃなくて？
「違う！バニラ、バニラ！！バニバニ！」
･･･バニバニて！どうしたのかしらねえ、お兄ちゃん。そんなにソフトクリーム食べたかったのかしらねえ。電車に間に合うといいんだけどねえ。
乗り込んだ電車の中で笑っちゃいながら、そんな風に噂をしていたら、お兄ちゃんがにこにこしながらホームをかけてきた。
「あ！あのお兄ちゃん！」
お兄ちゃんはお友達と一緒だったので、ほうらね！と思ったら、お友達も1つソフトクリームを持っていて、お兄ちゃんはやっぱり2つのソフトクリームを交互に舐めていた。
･･･やっぱ2個買ったのか。
きっと、夢だったんだろうな。両手にソフトクリームを持って交互に舐めるの。大人になったら一度は試してみたいって思ってたんだろうな。その気持ちはわからなくもない。

翌日、会社の自販機にチョコクリームとカスタードクリームの入った木村屋の2色パンがあったので、「は！もしや、あのお兄ちゃんみたいな両手食べが出来るやも？」と買ってみた。140円。結構高い。
食堂脇の給湯室に誰もいないのを見計らい、こそこそと2食パンを2つにちぎり、両手に持って交互食べしてみる。おお、この背徳感よ。

しかし、このパン、けっこうカサカサしていて口の水分を吸い取る。み！水！と思っても両手はふさがっている。これは危険だな。喉に詰まらせても胸を叩くこともできないんだものな。なにせ両手がふさがっているので。こいつは盲点だったわ。あのお兄ちゃんもきっと、改札を通れなかった時、あ！と思ったことだろう。
両手食べがお行儀悪いと言われるのは、危険で不便なせいもあるんだろうな、と身をもって実感した。

感じのお味は、と言えば、カサカサパンに、ねっとりとした安ーーーい感じのチョコクリームとカスタードクリーム。これに140円出すのは高齢者が多いのではないかと思われるが、くれぐれも喉に詰まらせぬよう注意をしてほしいものでございます。