火の玉
夜明けの街と新聞屋さんのヘッドライト。
今日も「アイソン」と呟いて、朝4時に起きた。
近所の公園で、空に双眼鏡を向けて、今日はあの辺りにアイソン彗星がいるはずだ、と探していたら、目の端に大きなオレンジ色の光が映った。
北の空をすーっと長く横切って消えた明るい火の玉。
すごいもの見ちゃった!と浮かれるより先に、ちょっと不気味で不穏で怖くなった。
大昔の人は、日食や月食、ハレー彗星も不吉な兆しとして大騒ぎしたらしい。
国によっては虹でさえ、不吉と感じるそうだ。
その気持ちがわかる気がした。
いつもは見えない「すごいもの」は、すごくて、びっくりして、それから少し怖くなる。天変地異の前触れじゃないか、なんて考えてしまう。
「観れた!」と嬉しくなるのは、それがあらかじめ、そこにある、そこに来るとわかっているほうき星だからなんだな、とアイソンを探しながら思った。
あれは夢や幻じゃないよね、とネットを見てみたらTwitterでたくさんの人が「UFOを見た」「隕石を見た」と呟いていた。それから「何か起こるんじゃないか」って心配している人もいた。
それは大昔の村人が、朝の井戸端なんかで「あれ見た?」「◯◯さんちのお婆さんが見たって」とざわざわしてるのと何も変わらない感じがした。
日が昇って、よく晴れた土曜日、もう不気味な感じは消えて、ただただ何度も胸の中をあの火の玉がすーっと横切っていく。
時間が経てば経つほど、記憶の中のそれはどんどん美しい姿にかわって。
*追記*
あれは火球というものだったそうです。
さっき大きめの地震が長く続いたので、あの火の球はやっぱり予兆?と思ってしまいました。また地震(>_<)!
16日5時8分頃関東上空に流れた火球。アイソン彗星を観望中に目撃された方も多いようです。 pic.twitter.com/eA6ehOpB0T
— 下田 力 (@c_shimo) 2013, 11月 15