恋は恋
「恋はするものじゃない、落ちるものだ」と、江國香織原作の映画「東京タワー」の中で、V6の岡田くんが言っていた。全然おもしろくない映画だったけれど、あんまりに自信満々にそう言われるから「ふーん、落ちるのか」と思っていた。しかし足元に注意して生きてきたせいか、なかなか落ちない。
でもまあ、「落下型の恋」の人も割と多いんだろう。
もはやどうやって好きになるんだか忘れてしまったけれど、かつての恋を思い起こせば、ふとしたきっかけに「あ、いいかも、好きかも。・・・好き!」と自分に言い聞かせるところから始まったような気がする。
周りの子達が恋に落ちていく様子を見ても「ねえねえ、どう思う?これって恋かなあ?」「いいじゃん、好きになっちゃいなよ!」「恋だよ、恋!」と友達同士の会話の中で、「これは恋である。私は彼が好きだ」と自分に言い聞かせてから走り出す「認証型の恋」が多かった気がする。
ところがところが。
羽海野チカのマンガ「ハチミツとクローバー」の竹本くんは、自分が恋に落ちたことになかなか気が付かない。一目で恋に落ちたことに、周りの人間は気づいているのに本人だけは気が付かない。
三浦しをんの「風が強く吹いている」の主人公、走もそうだ。分厚い小説の序盤で恋に落ちていて、みんながそれを知っているのに、恋心に気が付くのは、残りのページもあと数ミリという厚さになってからだ。
漫画の中にも書いてあったけど、「10年前のマックでインストール型の時間のかかる恋」なんだな。
さて、話はバナナです。
年末、高校時代の先輩と「どうしてる?」なんてメールやり取りする中で、「あれの使いみち」という記事に書いた後輩、ふみと連絡がとれた。
おお、ふみ!!元気なの?バナナスタンドどうなった?
記事のコメント欄で、「おすすめのバナナスタンドを教えてほしい」なんて事も言われていたので、今更だけれど「ふみのおすすめは何?」とも尋ねてみたら、懐かしい口調がよみがえるような返信が来た。
「収集癖はないですが、まめ先輩がツボにハマったバナナスタンドはまだ部屋においてますよー。久しくバナナ吊るしてないですけど」
・・・じゃあ、お前は何を吊るしているのだ。
もう、かれこれ10年はふみに会っていない。いや、15年かもしれない。
それでも、15年前と変わらず、バナナスタンドはそこにある。「収集癖はない」と言っているので、あれから増えてはいないのかもしれない。でも3つは確実にある。しかも「久しくバナナを吊るしていない」状態で。
ふみ、アンタね、気付いてないかもしれないけれど、それは恋よ?相当熱烈なバナナスタンドへの恋心よ?
「収集癖はない」とかカッコつけてるけど、恋心インストールに時間がかかっているだけで、アンタがバナナスタンドを愛していることなどわかりきっているのよ?
かつて松山千春は「男はいつも待たせるだけで 女はいつも待ちくたびれて それでもいいとなぐさめていた それでも恋は恋」
と切なく歌っていたが、あれも、低スペックマシンで恋心インストール中の男に「は?まだインストール終わってないんですけど!もう無理!インテル入ってるやつに買い換える!」と愛想をつかした女の歌なのではなかろうか。
・・・それでも恋は恋だけれど。
- アーティスト: 松山千春
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